イノコヅチ/いのこづち/猪子椎
Japanese Achyranthes
【イノコヅチとは】
・北海道を除く日本各地に分布するヒユ科の多年草。「猪子(いのこ)」はイノシシの子、「槌(つち)」はハンマーの意で、茎の節が膨らむ様をイノシシの膝に見立てて名付けられた。暖地であれば山野の林縁のみならず道端や竹藪にも育つ丈夫な性質と高い繁殖力を持ち、都市部の公園等にも自生する。
・果実はヌスビトハギやキンミズヒキなどと共に「ひっつき虫」と呼ばれ、衣類や野生動物の毛に付着して拡散される。このためイノコヅチという名前の由来は、本種の群落を通り抜けたイノシシに子(実)が付く音に由来するという説もある。
・漢名は「牛膝(ぎゅうしつ)」で、こちらはイノシシではなくウマの脚に見立てたもの。本来は「午(うま)」だったものが誤って「牛」として伝わったとされ、駒の膝(「駒」は子馬の古い呼び名)という別名もある。
・葉は長さ6~15センチほどの長楕円形でギザギザはなく、両端が尖る。質は薄くて光沢はなく、疎らに毛がある。葉は短い柄に連なり、太くて硬い茎から対になって生じる。
・茎は疎らだが大きく広がり、その断面は四角に近い。名前の由来となる節は膨らんで赤紫色を帯びる。若葉にはクセがなく、戦後の食糧難には食糧にしたという。現代では積極的に食用することは少ないが、稀にお浸しや天婦羅などにして食べる。
・イノコヅチの開花は8~9月で、茎の先端や先端近くの葉の脇から直立する花穂に、貧弱な緑色の小花を疎らに咲かせる。花穂は長さ10~20センチほど。小花に花弁はなく、5本の雄しべと1本の雌しべ、そして小さな苞葉が2~3枚ある。
・花の後には小さな緑色の果実ができるが、簡単に離脱する。果実には苞葉が変化した鉤状の突起があり、これによって繊維質の他物に付着する。
・民間療法においては、イノコヅチの根を日干しして煎じて飲めば 腎炎、膀胱炎、利尿、強壮、生理不順に効くとする。根は粗くて太めではあるが、下記のヒナタイノコヅチに比べると細長い。
【イノコヅチの品種】
・ヒナタイノコヅチ(フシダカ)
本州~九州に分布する近縁の在来種で、名前のとおり日当たりの良い荒地や道端に見られる。イノコヅチに比べると大きくなりやすく、全体に毛が多い。また、葉の縁が波打つようになるのもイノコヅチとは異なる。
・ヤナギイノコヅチ
葉の細長い品種
・マルバイノコヅチ
葉が丸みを帯びる品種
イノコヅチの基本データ
【分 類】ヒユ科/イノコヅチ属
多年草
【漢 字】猪子槌/豕槌
【別 名】ヒカゲイノコヅチ
フジダカ(節高)
コマノヒザ(駒の膝)
コマノスネ/キツネノシラミ
トビツキグサ/ヒッツキボウ
ドロボウグサ
【学 名】Achyranthes japonica
【英 名】Japanese chaff flower
【開花期】8~9月
【花の色】黄緑
【草 丈】40~100cm