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ウワミズザクラ/うわみずざくら/上溝桜

Japanese bird cherry

うわみずざくら,開花時期
サクラらしくない、白いブラシのような花が咲く
うわみずざくら,上溝桜,ふゆめ
ウワミズザクラの冬芽
アンニンゴ,材料
新芽の様子
うわみずざくら,ハハカの木
新芽と蕾の様子
上溝桜,うわみぞ,樹木図鑑
新緑と蕾の様子
Japanese bird cherry
ウワミズザクラの花はソメイヨシノよりもやや遅れて咲く
うわみずざくら,上溝桜,花
英名は「Japanese bird cherry」近くで見ると鳥の目のよう
ブラシみたいな花が咲く木
ウワミズザクラの花
うわみず桜,特徴
多数ある雄しべは花弁よりも長い
uzamizuzakura
満開の頃の様子
上溝桜,葉,うわみぞざくら
ウワミズザクラの新葉
うわみずざくら,葉っぱ
葉の裏側は亀の甲のようで特徴的だ
ウワミズザクラ,樹木図鑑
新緑の頃の様子
うわみぞざくら,果実
花の後にはサクランボと全く違う実ができる
うわみずざくら,ハハカの実
でき始めは緑色だが・・・
ハハカ,木
熟し始めるとカラフルに展開する
うわみずざくら,ハハカ,種,画像
熟して落下した種子の様子
ウワミズザクラ,葉っぱ,画像
成葉の様子(8月) 長さは5~10センチ
うわみずざくら,樹木
紅葉の様子
ウワミズザクラの紅葉,画像
紅葉期の様子
うわみずざくら,ウワミズザクラ,紅葉,黄葉
条件によってはこうした色合いに 
Japanese bird cherry
樹皮の様子。株立ちも多い

【ウワミズザクラとは】

・北海道南西部~九州に分布するサクラの仲間。湿気のある低地の藪や沢沿いの斜面などに多数見られるが、自生をいかした庭木として公園や緑地にも使われる。

 

・ウワミズザクラの開花は新葉が展開した後の4月から5月。直径6~8ミリほどの小さな白い花が、長さ10センチ前後の穂状に集まって咲く。多数の雄しべがブラシのように並び、5枚ある花弁は雄しべよりも短い。一つ一つの花を見ればサクラの仲間だと納得しやすいが、ソメイヨシノのようなサクラの花のイメージとは程遠く、鑑賞のために人が集まることはほぼない。

 

・葉は卵形で先端は尾状に長く尖り、枝から互い違いに生じる。日向であれば秋には紅、ピンク、黄色と様々に紅葉し、花の時季よりも人目を惹く。落葉と同時に花や実が付いていた小枝は落下するため、冬季の枝ぶりは独特のものとなる。

 

・8月ごろから出来始める果実は直径8ミリほど。緑、黄色、赤、黒紫と移り変わる。十分に熟したウワミズザクラの果実は甘くて美味しく、ツキノワグマなどの野性動物はこれを食餌とし、ヒヨドリ、ムクドリ、オナガ、キジバト、メジロ、アオゲラ、ハシブトガラスなど多くの野鳥もこれに集まる。

 

若い蕾を塩漬けにしたものは「杏仁香(アンニンゴ)」と呼ばれ、焼き物の前付けや酒の肴にされる。杏仁香(杏仁子)は不老不死の妙薬とされ、三蔵法師は仏教の経典と共にこれを求めて旅に出たという説もある。杏仁香を漬けた果実酒は杏仁香酒と呼ばれる。

 

・かつてこの木の枝で亀の甲羅や鹿の角を焼き、それらにできた溝の位置で吉凶を占ったことから、上溝桜の名が付けられた。天皇が即位して最初に行う新嘗祭(大嘗祭)の儀式に使う「ハハカ(波波迦)」とはウワミズザクラのことで、古事記に由来する神秘的な行事だが、今上天皇が即位した際にもこれに倣ってコメの品種を決めた。

 

・材は堅く、断面は臭気がきつい。若い枝を折っても同様の臭いがする。樹皮はいかにもサクラだが、材としては他のサクラよりも劣るため材木に使用されることはほぼないが、火力が強いため薪には適する。

 

【ウワミズザクラの育て方のポイント】

・通好みの地味な花であり、花を目的に植栽されるケースは少ない。雄大な樹形を鑑賞するものであり、公共のスペース以外では管理が難しい。

 

・丈夫な性質を持つが、自生地は山間の沢沿いであり、湿気と栄養分のある土地を好む。また、きれいな紅葉を見るには日当たりが重要。

 

・花が咲くのはその年に伸びた枝先であり、3~4月に剪定すると花数は少なくなる。

 

【ウワミズザクラに似た花木】 

イヌザクラ  

 ウワミズザクラは花が咲く小枝に数枚の葉を生じるが、イヌザクラは葉がまったくない。また、葉の形も微妙に異なる。  

犬桜と上溝桜,似ている
イヌザクラは花茎に葉がない
Japanese bird cherry
ウワミズザクラの花の下には数枚の葉がある
上溝桜と犬桜の違い
ウワミズザクラ(左)とイヌザクラ(右)

 

・エゾノウワミズザクラ 

 北海道に見られる近縁種。雄しべが花弁より短いのがウワミズザクラとの違い。

ウワミズザクラの品種
エゾノウワミズザクラ

 

シウリザクラ(ミヤマイヌザクラ/シオリザクラ)

 北海道や中部地方の山間など寒冷地に見られる近縁種。花弁と雄しべが同じくらいの長さで、葉の基部がハート型になる。「シウリ」はアイヌ語で「苦い」を意味する「シウニ」に由来し、果実や樹皮に苦味がある。

ブラシのような花の木
シウリザクラ

 

リンボク  

 同じような花が咲いて実がなるが、常緑性であることと開花期が秋であることが異なる。

ウワミズザクラに似ている木
ウワミズザクラに似ている木

 

バクチノキ

 関東地方南部以西に分布する常緑樹。剥離する木肌の様子を、博打に負け続けて丸裸になった者に例えた。開花は9~10月。

うわみずざくらの仲間
バクチノキ

 

セイヨウバクチノキ

 ヨーロッパ東南部及びアジア西部を原産とする常緑樹でバクチノキに似る。開花は晩春~初夏。 

セイヨウバクチノキ
セイヨウバクチノキ

ウワミズザクラの基本データ

 

【分類】バラ科/ウワミズザクラ属

    落葉広葉/高木

【漢字】上溝桜(うわみずざくら)

【別名】ハハカ/ホエビソ

    コンゴウザクラ(金剛桜)

【学名】Padus grayana

【英名】Japanese bird cherry

【成長】早い

【移植】簡単

【高さ】10m~20m

【用途】公園/食用

【値段】2000円~

 

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