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エンジュ/えんじゅ/槐

Japanese Pagoda Tree

槐,えんじゅ,庭木図鑑
花の時期の様子
えんじゅ,Japanese Pagoda Tree
エンジュの冬芽
えんじゅのき,新芽
芽出しの様子
槐の木,えんじゅ
若葉の様子
槐,植物,樹木
エンジュの成葉
槐の葉
成葉の様子
エンジュの葉っぱ 裏側
葉の裏面は白っぽい
エンジュの木,えだ
枝の様子
エンジュ,ツボミ
漢方では咲きかけたエンジュの蕾を止血薬とする
えんじゅ,花
花の長さは1~1.5センチほど
Chinese scholar tree,flower
開花時期は7~8月 枝先にまとまって開花する
槐の花,時期
個体や時季によっては一部が桃色に 
延寿,樹木
果期の様子
槐,種子,果実
エンジュには豆のような実がなる
槐の木,実
熟しても自然に裂けることはない
樹形,剪定
枝葉を大きく広げながら育つ
えんじゅ,エンジュの幹
樹皮の様子 この中の「内樹皮」には独特の香りがある
えんじゅのき,材質
幹の断面
エンジュ,えんじゅ,樹木
幹の断面

【エンジュとは】

・中国北部を原産とするマメ科エンジュ属の落葉高木。性質が丈夫で管理に手間がかからないことや木全体に薬効があることから、日本全国に街路樹あるいは公園樹として植栽される。エンジュという名は、イヌエンジュの古名「エニス(恵爾須)」が転訛したものとされる。

 

・学名に「japonica」とあるのは日本産と勘違いされたため。古代中国(周)では朝廷にエンジュを三本植え、位の高い三人の大臣がそれに向かって座した格式の高い木とされる。現代の中国でも縁起の良い木とされ、「出世の樹」「崇拝の樹」「尊貴の樹」として中庭に植えることや、記念樹、魔除け、安産の守りに使うことがある。

 

・エンジュが日本に渡来した時期は不明だが、神功皇后(170~269年)の伝説に、安産の祝いとしてエンジュを植えたとされ、今昔物語にも庭木として登場する。明治10年代には東京の街路樹として使われ始め、現代でも山の手通りなどに見られる。また、エンジュは学問の木とされることもあり、日本最古の学問所である足利学校(栃木県)などに植栽される。 

 

・葉は卵形をした長さ2~5センチの小葉が4~7対、羽根状に集まり、枝から互い違いに生じる。表面は深緑色で裏面は白っぽい。茹でて苦味を取り除いた新葉は食用に、乾燥させたものは茶や湿疹の薬にされる。

 

・エンジュの開花は7~8月で「槐の花」は夏の季語。花はクリーム色の蝶型で中央が黄色く、一つ一つは1~1.5センチほどと小さいが、枝先にまとまって大きな円錐状に咲くため、遠目からは木の上に煙が立ち上がっているように見える。

 

・エンジュの蕾には血管をしなやかにするルチンが含まれており、漢方では「槐花(かいか)」と称し、歯茎など口腔内の止血や喀血などに使う。また黄色の染料としても用いることができる。

 

・花の後には数珠のようにくびれた果実が枝先から垂れ下がり、12月頃になると褐色に熟す。長さ4~7センチほど。内部は肉質で触ると粘りがある。苦味があって食用にならないが、ムクドリ、オナガ、ヒヨドリなどの野鳥が稀に食べる。漢方では乾燥させたエンジュの実を内服すれば痔疾に効果があるとする。

 

・材は器具、楽器、家具に使われ、灰色の樹皮を煎じたものは腰痛の薬に、根は「苦参(くじん)」という漢方薬になる。苦参はアルカロイドなどを含み、解熱や利尿に効果があるとされる。

 

・変種のシダレエンジュは曲がりくねった枝の形を竜の爪に見立て、中国では「竜爪樹」と呼ばれる。エンジュよりもさらに縁起の良い木として特に好まれ、京都の二条城や東京の代々木公園に見られる。

 

【エンジュの育て方のポイント】

・エンジュは基本的には肥沃な土を好むが、荒地に最初に育ついわゆる「パイオニア植物」であり、よほど乾燥が厳しくなければ痩せ地でも育つ。

 

・耐寒性があるものの、植栽適地は関東以西となる。

 

・枝葉を大きく広げるため、エンジュ本来の樹形を楽しむにはある程度のスペースが必要となる。剪定には強いが自然樹形が美しく、剪定によって形が乱れやすい。

 

・移植を嫌うため植え場所を慎重に選ぶ必要がある。

 

・病害虫には比較的強いが、ウラギンシジミという蝶の食草であり、幼虫によって蕾や花を食害されることがある。また、さび病にかかることがある。

 

【エンジュの品種】

・シダレエンジュ

 枝が垂れ下がり、なおかつ曲がる。中国では枝ぶりが竜の爪のようで縁起がよいとされる。日本でも公園や植物園で稀に植栽される。 

 

・この他エンジュには赤や青の花を咲かせる品種がある。 

枝垂れ槐,画像
シダレエンジュは中国で人気が高い
しだれえんじゅ,木
シダレエンジュの新葉
枝垂れえんじゅ
シダレエンジュの葉
紅葉
シダレエンジュの黄葉

 

【エンジュに似た植物】

ハリエンジュ(ニセアカシア)

 北アメリカを原産とするマメ科ハリエンジュ属の落葉高木。エンジュは花序(花の集り)が立ち上がるが、ハリエンジュの花は枝先に垂れ下がり、強烈な甘い香りを放つ。

 

イヌエンジュ(クロエンジュ) 

 北海道又は本州北部に分布する日本原産の木で、単にエンジュと呼ばれることもあるが、イヌエンジュ属の木でありエンジュとは異なる。花や葉の裏側に細い毛が密生すること、樹皮が黒っぽく、縦に裂けないこと、実が肉厚にならず、平らなサヤになることがエンジュとは異なる。

 

クララ

 近縁の多年草でエンジュと似たような蕾と実ができる。

 

クロバナエンジュ

 北アメリカ(カナダ、アメリカ及びメキシコ)を原産とするマメ科の落葉低木。正式な和名はイタチハギで、花はまったくエンジュに似ていないが、同じように豆果ができる。

 

ユクノキ

 関東以西の山地で稀に見られる落葉高木。初夏にエンジュのような白い花を咲かせ、エンジュ同様に豆果ができる。

エンジュの基本データ

 

【分類】マメ科/エンジュ属

    落葉広葉/高木 

【漢字】

【別名】エニス(恵爾須/槐)

【学名】Styphnolobium japonicum

【英名】Japanese Pagoda Tree

【成長】やや早い 

【移植】難しい 

【高さ】10~20m 

【用途】街路樹/公園/器具材

【値段】1000円~

 

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