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コウヤマキ/こうやまき/高野槙

Japanese umbrella pine

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コウヤマキの自然樹形は東京スカイツリーに似ている?
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コウヤマキの新芽
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新緑の様子
こうやまき,高野槙の木
新緑の頃は葉が垂れ下がる
Japanese umbrella pine
コウヤマキの成葉
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葉の裏面の中央は窪み、白色を帯びる
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コウヤマキの自然樹形
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こうして剪定すれば洋風庭園にも馴染む
こうやまき,切り枝,サカキの代わり
切った枝を神仏の供物に使うことも
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コウヤマキの雄花
雌花と雄花,こうやまき
コウヤマキの雌花
コウヤマキ,こうやまき,まつぼっくり
「まつぼっくり」の先から葉が生じるのが特徴
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果実は中に種がなくなっても長い間、枝に残る
コウヤマキ,こうやまき,葉っぱが茶色
寒さに弱いため寒冷地では冬に葉が茶色くなり、やや見苦しい
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成長が遅い分、風格のある樹姿となる
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稀に二股、三股になるものも・・・
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コウヤマキは古木になっても地道に育ち続ける

【コウヤマキとは】

・東北地方南部(福島と新潟の県境)、木曽以西の本州、四国及び宮崎県以北の九州に点在するコウヤマキ科の常緑針葉樹。かつては北半球に広く分布していたが、現在では日本にのみ残るため、日本固有の樹木とされる。

 

・本種をスギ科とする書籍も多いが、コウヤマキ科として独立している。しかし、コウヤマキ科には本種しかなく「一科一属一種」の珍しい植物であり、また、日本にしかない「~科」はコウヤマキ科のみである。庭木としては人工的に繁殖されたものが多数出回っており、公園や寺社仏閣等で普通に見られる。

 

・和歌山県の高野山や奈良県との県境にある大台ケ原に多いことからコウヤマキと名付けられた。高野山ではアカマツスギヒノキツガモミと並ぶ「高野六木」に数え上げられる。 

 

・コウヤマキの葉は肉厚な線形で、幅は3~4ミリ、長さは6~12センチほど。表裏とも中央に溝があり、先端は少し窪むため手で触れても痛くない。短い枝では2本の葉が対になり、放射状に生じる。その様子が傘の骨のように見えるとして英名はumbrella pine(傘松)となった。

 

・枝葉はイヌマキなどより色合いが明るく、誤用が定着した「金松」という別名もある。高野山の開祖である弘法大師は花の代わりにこれを仏前に供えたといい、現代でも地方や宗派によってはお盆などの仏事に使う。ただし、材を棺桶に使った歴史があることから、神道では忌み嫌う傾向もある。

 

・かなり地味だが3~5月に花(雌雄同株)が咲く。雄花は画像のようなクリーム色で枝先に20~30個、雌花はオレンジ色を帯びた緑色で枝先に1~2個ずつ咲く。花の後にはマツボックリのような実(球果)ができる。

 

・マツボックリは直径6~12センチほどの楕円形または円柱形。開花から1年以上たった翌年10~11月に褐色に熟す。中に含まれる種子は1ミリ弱の楕円形で小さな翼を持ち、秋になると風で拡散される。なお、画像のようにマツボックリの先端から葉を生じることが多く、初見では驚愕する。

 

・東京スカイツリーのデザインの原点になったというその樹姿は端正な円錐形が基本。あまり剪定しなくても年を経るごとに風格が漂い、和風庭園の主役となる。前後左右どこから見ても樹形が美しく、ナンヨウスギヒマラヤスギとともに「世界三大公園木(造園木)」の一つに数えられ、西洋でも知られる。

 

・成長は極めて遅いが、樹齢を重ねれば樹高40m、直径1.5mになる。樹皮は赤みを帯びた褐色で、古木では鱗状になって縦に剥がれ落ちる。材は耐水性と耐久性が高いため、江戸時代の尾張藩ではヒノキサワラクロベアスナロと共に優良な材を賞する「木曽五木」に数え上げられ、その伐採は厳重に規制された。材は橋脚(橋杭)、船舶に、現代でも建築や器具(碁盤、将棋盤、風呂桶など)に、樹皮は船舶や桶などの水漏れを防ぐ「槙肌(まいはだ)」に使われる。 

 

・コウヤマキの先祖に当たる種の出現は今から2億年以上前と考えられているが、日本書紀には素戔嗚尊(スサノオノミコト)が抜き散らした尻毛がコウヤマキになったこと、棺に適した材であることが記されている。古墳時代の遺跡からは棺が、弥生時代の遺跡からは建材として使われた形跡が見付かっており、現代では悠仁親王の「お印」として使われる。

 

・材には独特の甘いフルーティーな香りがあり、別名をクサマキ(臭い槙)という。抽出されるオイルには保湿力を高める効果があり、エッセンシャルオイルや美容液として使われる。また、民間療法として歯周病の治療に用いることがある。

 

【コウヤマキの育て方のポイント】

・天然では山の尾根筋などの崖地にも生じ、基本的には土を選ばず、乾燥にも耐えて育つが、水はけのよい肥沃地に植えるとより良い。大気汚染や西日には弱く、条件の厳しい場所では葉の色が悪くなる。西日は根元に低木や草花を増えて防御したい。

 

・コウヤマキの稚樹は林内の暗闇でも育つほど日陰に強いが、ある程度成長し、葉の量が増えると日向を好むようになる。一般的な樹木よりは日陰に強いため、日陰のシンボルツリーとして使用できるが、日陰では枝葉の密度が低くなり、間延びしたような樹姿になる。

 

・画像のように円筒形に刈り込まれることもあるが、苗木の成長は遅い上、自然に整った円錐形となるため剪定はほとんど必要ない。切りすぎると木が衰えるので、年に一度、樹形を乱すような枝を根元から切除する程度にとどめる。

 

・剪定した枝葉を利用して挿し木で増やすことができるものの、活着率は高くない。苗木の販売価格は高めだが、剪定費用を含めた長期的なコストが低いことも、この木が珍重される理由といえる。ただし、成長が遅いとはいえ、樹齢を重ねるほど成長速度を増し、古木になっても地道に伸び続ける上、枝が横に広がり出す。長期的に管理するには広い場所に植える必要がある。

 

・稀に黒斑病に罹るが、基本的には病害虫に強い。ただし、土の養分が乏しくなると葉が黄色くなることがある。有機肥料を施して対応するのがよい。また、寒冷な地方では冬季に葉が茶色くなる場合もあるが、殊更に対策をしなくても翌春には緑色になる。

 

【コウヤマキの品種】

・シダレコウヤマキ(枝垂れ高野槙)

 文字どおり枝が垂れる品種だが、サクラやウメのように派手に枝垂れるわけではなく、品種として認定するのは妖しい。

 

・センボンマキ(千本槙)

 主だった幹がなく、株立ち状に育つ。シダレコウヤマキ同様に品種というよりも個体の特徴から命名されたものと考えるのが自然。

 

・フイリコウヤマキ(斑入り高野槙)

 葉に白や黄色の模様が入る品種

 

【コウヤマキに似ている木

・マキには他にラカンマキイヌマキなどがあるが、これらは剪定に強く、成長も早いことから、垣根や目隠しとして積極的に使用される。一方、コウヤマキは葉が細く、枝葉の密度が低いため、緻密な垣根とするには時間を要する。なお、コウヤマキはコウヤマキ科だが、イヌマキとラカンマキはマキ科であり、両者に分類上の関連はない。葉の様子は下の画像のとおりで、中央部の色合いが全く異なる。

槙の見分け方
コウヤマキ(左)とラカンマキ(右)の葉(裏面)

コウヤマキの基本データ

 

【分類】コウヤマキ科/コウヤマキ属

    常緑針葉/高木

【漢字】高野槙/高野真木

【別名】ホンマキ/マキ/トウマキ

    クサマキ/キンマツ(金松)

【学名】Sciadopitys verticillata

【英名】Japanese umbrella pine

【成長】遅い

【移植】苗木は容易だが大木は困難

【高さ】20m~40m

【用途】シンボルツリー/垣根

【値段】5000円~

 

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