庭木図鑑 植木ペディア > ウメ
ウメ/うめ/梅
Japanese apricot
【ウメとは】
・中国の江南地方を原産とするバラ科の落葉小高木。早春に咲く花は、お花見の対象としてサクラより長い歴史を持ち、奈良時代以前に「花」といえばウメを表したほど。日本で最も親しまれている果樹の一つでもあり、梅干しや梅酒として広く実用される。
・ウメは寿命が長く、古木となっても力強く芽吹くことや、肌寒い早春に開花することなどから慶事の象徴とされ、マツ、タケとともに「歳寒三友」、そして菊、蘭、竹とともに「四君子」と呼ばれる。
・1月下旬~3月に咲くウメの花は、サクラの倍以上の歌が万葉集に詠まれる。日本には自生がなく、奈良時代以前に薬用として中国から渡来したする説が一般的だが、もともと九州に自生があったとする説もある。
・ウメという名前の由来には、①「梅」の中国音「メイ」から、②朝鮮名の「マイ」から、③未熟なウメの実を黒焼きにして作る薬「烏梅(ウバイ)」から、とする説がある。また、ウメは学問との関連が深く、「好文木」という別名は、かつて晋(中国)の武帝が学問を怠ると花が枯れたという故事に由来する。
・ウメは園芸品種が多く、花の色や形には様々なバリエーションがあるが、基本種は一重の五弁花。花を観賞するための「花ウメ」と、収穫用の「実ウメ」に大別されるが、花ウメの多くは江戸時代に作られた。花の色には白、赤、ピンクとそれらの混合種があるが、香りの高い白花に最も高い価値があるとされる。
・ウメの実が熟すのは6月頃で、この時期に降る雨を梅雨という。シソの葉で漬けた梅干しや梅酒を目的とした「実ウメ」の産地は、和歌山、群馬、徳島が知られる。代表的な品種は「白加賀」と「小梅」。実が黄熟しない青梅(おうめ)も有名。江戸時代には工業用の酸を採取するため、幕府によって植栽が奨励された。
・ウメの葉は長さ4~8センチ、幅3~6センチほどで、枝から互い違いに生じる。卵形で葉の先端は細く突き出し、縁には細かなギザギザがある。
・ウメの木の直径は最大で60センチほどになり、樹齢を重ねると樹皮は縦に粗く裂ける。樹皮は暗灰色だが材は暖色系で、目が細かくて硬く、狂いが少ないことから稀に木材として流通し、数珠、ソロバン玉、茶道具、根付などの工芸品に使われる。
【ウメの育て方のポイント】
・乾燥に強く、基本的には丈夫な性質を持つ。土質もさほど選ばずに育つが、病害虫の被害は多い(ウメケムシ、アブラムシ、カガラムシ、コスカシバ、オビカレハ、黒星病などなど)。予防のため冬期に石灰硫黄合剤を2~3回散布するのが基本。
・日向であれば開花するが、花は短い枝に咲くため、枝を切り詰めて短い枝が多く出るようにする。剪定に強く、形を自由に仕立てられる。
・「徒長枝」と呼ばれる、長く突き出した枝は花つきが悪く、樹形を乱すため、根元から切り除く。枝を大事にし過ぎて剪定をしないと花や実がならなくなることから、植木職人の間では「サクラ切るバカ、ウメ切らぬバカ」という。ちなみにサクラは樹勢が弱く、剪定されることを好まない。
・単一品種では実のなりが悪い。より多く収穫するためには数種類を一緒に植える必要がある。
【ウメに似ている木】
・アンズ
よく似た花を咲かせ、素人では見分けにくいが、アンズの葉はウメよりも丸みを帯び、葉の先端はウメほどに尖らない。
・ロウバイ
ウメより早い時期に黄色くて香りの高い花を咲かせる。早咲きのウメとは開花時期が重なることや、多くの梅園で一緒に植栽されていることから、黄色い花が咲くウメのように誤解されがちだが、ウメとは関係がない。
【ウメの品種】
・梅の品種は300種類とも500種類ともいわれる。花の観賞を目的とした「花ウメ」と、収穫を目的とした「実ウメ」に大別されるが、花ウメはさらに以下のように分類される。
①原種に近い「野梅性」
②小枝と萼が緑色をした「緑萼性(青軸性)」
③古枝の髄まで赤い「紅梅性」
④大輪の花が咲き、秋以降に枝が紫がかる「豊後性」
⑤アンズとの交配によって作られた「アンズ性」
⑥枝がしだれる「枝垂れ性」
白い花が咲く品種
紅・ピンクの花が咲く品種
ウメの基本データ
【分類】バラ科 サクラ属
落葉広葉 高木
【学名】Prunus mume
【別名】ニオイザクラ/好文木/花の兄/雪中君子/春告草
花魁/香栄草など多数
【成長】遅い
【移植】簡単
【高さ】3m~10m
【用途】花木/果樹/盆栽/公園/切り花
【値段】800円~