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アリドオシ/ありどおし/蟻通し
Aridoshi tree
【アリドオシとは】
・関東以西の本州、四国、九州及び沖縄に自生するアカネ科の常緑低木で、暖地の常緑樹林に多い。葉の付け根に長いトゲがあるのが特徴で、このトゲが小さな蟻をも刺し通すとして「蟻通し」と名付けられた。日本固有種ではなく韓国や東南アジアにも分布する。
・条件の悪いところでも育ち、花の少ない時季に赤い実をつけるため、和風庭園では他の樹木の下に「根締め」として使ったり、水鉢の前に植えて楽しむ。同じように冬に赤い実をつけるマンリョウ、センリョウ、ヒャクリョウ(カラタチバナ)、ジュウリョウ(ヤブコウジ)、オクリョウ(ミヤマシキミ)とともに縁起のよい木とされる。
・古い造園の世界では、センリョウ、マンリョウと共にこれを植え、「千両、万両、有り通し(=年中お金に困らない)」と洒落込むことがあった。関西地方では正月の床飾りに使う。
・アリドオシの葉は長さ1~2.5センチほどの楕円形で厚みがあり、先端は短く尖る。枝から対になって生じ、大きめの葉と小さめの葉が交互に並ぶ。表面に光沢があるため、光を当てれば画像のように反射する。刺は葉の脇から生じ、葉よりも長くなる。
・初夏(5月頃)になると葉の付け根にラッパ型の白い花を1~2輪咲かせる。長さ1センチほどで先端は四つに分かれ、柔らかい毛が密生する内部には雄しべが四つある。薄暗い林内では多くの花は咲かず、果実と同様にあまり目立たない。
・10月から成熟する果実は直径5~7ミリほどで、中には2~3粒の種子を含む。翌5月頃までの長い間、枝に残るため「(赤い実が)有り通し」として名付けられたという説もある。果実は2個並んでできるが、センリョウやマンリョウほど多くの実は付けず、その地味さゆえに別名「一両」と呼ばれる。小さな実はよく見ると先端に「萼片」が残っている。
・アリドオシという名前の由来については他にも、枝が地上低く横に広がるため、蟻ぐらいしか、その下を通ることができないことにちなむという説もある。樹高は最大60センチほどで、主となる幹(枝)は必ず二股になる。
【アリドオシの育て方のポイント】
・自生地は山地の乾いた林内で、薄暗い場所にまとまって生えていることが多い。園芸品種には適応力があり、土を選ばずに育ち、かなりの日陰でも赤い実をつける。むしろ、日当たりの強い場所では葉焼けを起こすため、直射日光は避けて植えた方がよい。
・耐寒性はあるものの、冬の寒風には弱く、枝葉はまばらになりがち。寒い地方では他の植木の陰になるような場所に植えるのがよい。植栽の北限は茨城県北茨城市とされる。
・成長すると枝葉は平に広がり、地を這うような独特の樹形になる。幹が細く、弱々しい印象を受けるが、剪定には耐える。ただし、成長は遅めであり、実質的にはそれほど剪定の必要がない。もちろん、棘があるため手入れは厄介。
【アリドオシの品種】
・ヒメアリドオシ
アリドオシよりも枝が細かに分岐し、トゲは通常のものよりはるかに長い。市場での流通量は少なめで、採取した実から育てることが多い。
・オオアリドオシ(ジュズネノキ/ニセジュズネノキ)
葉が大型(10センチほど)で、トゲが葉よりも短い品種。自生地はアリドオシと同様だが、別名のとおり根が数珠のような団子状になるのが特徴。葉の長さが6センチほどになるリュウキュウアリドオシや、トゲがほとんどないナガバジュズネノキという品種もある。
・白実アリドオシ
文字どおり、白い実がなる品種
・斑入りアリドオシ
葉に白い模様が入る品種。アリドオシよりも明るい印象があり、洋風の庭の下草としても違和感がない。模様の入り方によって白覆輪などの名前がある。
【アリドオシに似ている木】
本種とは全く関係ないが枝にトゲがあり、生け花の世界でアリドオシと呼ばれることがある。
アリドオシの基本データ
【分類】アカネ科 アリドオシ属
常緑広葉 低木
【成長】遅い
【漢字】蟻通し(ありどおし)
【別名】イチリョウ(一両)
ジュズネノキ(数珠根木)
アリドウシ
【学名】Damnacanthus indicus
【英名】─(Aridoshi tree)
【移植】簡単
【高さ】0.3m~0.6m
【用途】下草/盆栽(床飾り)
【値段】500円~