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イスノキ/いすのき/柞の木

Isu tree 

虫こぶ イスノキ
イスノキは「虫こぶ」ができる木として知られる

 

【イスノキとは】

・静岡県以西の本州、四国、九州及び沖縄に分布するマンサク科の常緑高木。関東地方ではあまり馴染みのない木だが、関西以西の常緑樹林では普通に見られ、九州南部では森林を構成する主要な樹種となっている。日本以外では台湾や済州島及び中国大陸に自生。

 

・イスノキは成長が遅くて材が緻密であり、弥生時代から農具の鋤などに使われた。材木として価値の高い有用樹とされたため伐採が進み、天然の個体数は減少しているが、しっかりと根を張って枝葉を繁茂させるため、垣根や防風林として人工的に植栽される例は多い。

いすのき,イスノキ
イスノキの冬芽
イスノキ 画像
新芽の様子

 

・イスノキという名は沖縄の方言に由来するとされるが、詳細は分かっていない。中国名は「蚊母樹(ぶんぼじゅ)」で、後述の虫こぶに起因するが、日本での漢字表記は「柞の木」。「柞」一文字ではクヌギコナラを総称するハハソと読む。

 

・イスノキには多くの地方名が存在するが、別名ユスノキを「結寿の木」とし、縁起の良い木とする場合がある。 

ひょんのき,いすのき
若葉の付け根には「托葉」がある
いすのき,樹木,イスノキ
若葉の様子
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イスノキの葉
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葉の裏側の様子
ひょんの木,名前,いすのき
葉にできた虫こぶ

 

・葉の表面にはイスノキアブラムシなど10種類以上のアブラムシとダニが寄生し、これらによって刺激されたイスノキの細胞が異常に発育することで瘤状の虫こぶ(虫えい、五倍子ともいう)ができる。

 

・アブラムシが出て行った後の木化した虫こぶを笛にして吹くと「ヒョン、ヒョン」と音が鳴ること、また、虫こぶの形を瓢(ひょん=瓢箪、夕顔、冬瓜などの果実)に見立てたことから、別名をヒョンノキという。虫こぶのある葉や根には解毒作用があり、中国では薬用とする。

 

・イスノキの葉は庭木として多用されるモチノキモッコクに似た雰囲気を持ち、光沢と厚みがある。しかし、特徴に乏しく、縁のギザギザや毛がない上、先端が尖る葉と丸い葉があるなど、虫こぶがなければ見分けにくい。

 

・葉は長さ3~8センチ、幅は2~3センチほどの楕円形で枝から互い違いに生じ、短い柄がある。文政10年(1827年)に刊行された「草本性譜」によれば、火事になるとイスノキから風が発生して火を防いだという。

開花時期
イスノキの花

 

・イスノキの開花は3~5月で、葉の付け根から伸びた花茎の上方に両性花、下方に雄花を10輪前後咲かせる。花穂は葉に埋もれるため目立たないが、通好みの美しい花といえる。

 

・雄しべは5~8個で紅色に見えるのは葯。雌しべの先端は二つに裂け、3~6枚ある花弁のような萼片の外側には褐色の毛が生じる。

 

・花が終わると晩夏から秋にかけて、先の尖った卵形の果実ができる。蒴果と呼ばれるタイプの乾いた果実で、黄褐色の毛が密生し、10月頃に熟すと二つに裂け、中から黒光りする小粒の種子がこぼれ落ちる。繁殖はこの実生のほか、挿し木や接ぎ木による。 

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イスノキの実 虫が入らなければ・・・
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こんな感じになる 
いすのき,果実
実の直径は1センチほど
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虫が入ると、いろんな色形になる
いすのき,東京都美術館
イスノキは高さ10mほどまで育つが・・・
いすのき,垣根,イスノキ
関西では生垣として使われる

 

・幹の直径は最大1mほどで、樹皮は明るい灰色だが、樹齢を重ねると鱗状に剥離して赤みを帯びる。樹皮からは鳥もちを、樹皮と葉の灰を合わせたものは、有田焼の釉薬「いすばい」となる。

 

・建材としては床柱、床板、腰板に利用されるが、特に立木のまま枯らして風雨に晒した芯材である「スヌケ」は高級品として珍重される。

 

・イスノキの材は比重1.0前後で、中には水に沈む材もある。カシやリュウキュウコクタンと並ぶ日本有数の重さと硬さがあり、木目も美しいことから、木刀、小刀、そろばん、盆、杖、箱、三味線や三線の棹、拍子などに使われる。

 

・梳櫛(すきぐし)の材料になったことから、髪を洗って頭髪を整えることを意味する「ゆする」が転訛して柞(いす)となったという説もある。

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イスノキの樹皮
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樹齢を重ねると赤みを帯び、鱗状に剥がれる

【イスノキの育て方のポイント】

・成長が遅く、日陰や痩せ地でも生育可能。日陰の垣根や人が入りにくい場所の植え込みに適している。ただし、本来は日照を好み、日向の方が健全に育つ。

 

・丈夫な性質を持ち、特に土質にこだわる必要はない。病害虫や強風、潮風、暑さに強いが、風通しが悪いとモチ病を発生することがある。萌芽力があり強い刈込にも耐えるものの、樹形が乱れやすく、剪定にはややコツがいる。  

 

・庭に植えると山野の雰囲気を出すことができるものの、放任すれば直径1mを超える大木になるため、垣根以外に用途は少ない。一般家庭よりは公園や山地へ植栽することが多いが、ワイルドな樹形や古木の樹皮が野趣に富むとして、雑木風の庭に使われることもある。

 

【イスノキの品種】 

・葉に模様が入る斑入りイスノキ(初霜など)や枝が垂れるシダレイスノキがある。シダレイスノキは鹿児島で発見された品種であり、常緑樹の枝垂れは珍しいため価値があるとされる。

 

【イスノキに似ている木】

・シマイスノキ

 小笠原諸島に固有の近縁種。イスノキのような大木にならない。

島いすのき,樹木
シマイスノキ

 

ヌルデ

 分類上の関連はないが、イスノキと同じように葉に虫こぶができ、かつて「お歯黒」に使われた。

イスノキの基本データ

 

【分類】マンサク科/イスノキ属

    常緑広葉/高木

【漢字】柞の木(いすのき)

【別名】イボノキ/イス/ユスノキ

    ユシギ/ユシノキ/ユス

    クシノキ/ヒョンノキ

    サルブエ/サルビョウ

【学名】Distylium racemosum 

【英名】─(Isu tree)

【成長】やや遅い

【移植】簡単

【高さ】8m~20m

【用途】生垣、街路樹

【値段】1000円~

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コメント: 4
  • #4

    管理人 (日曜日, 02 7月 2023 09:41)

    ナッツという感じでしょうか。確かにまずそうです。
    新葉と花の画像を追加しました。

  • #3

    村井 吉博 (日曜日, 02 7月 2023 04:50)

    イスノキは、6月頃には、硬い種だけの実をいっぱい付けますがqいろんな鳥類が、食べに来ない。貪欲なヒヨドリも、寄りつかない。一番、マズイ木かも知れません。無毒で有れば、食べてみたいです♪♪^o^

  • #2

    管理人 (木曜日, 12 4月 2018 21:26)

    もりやんさん、コメントありがとうございます。虫こぶはイスノキのシンボルくらいに思っていましたが、ご自宅であれば不快でしょうね。浸透性有機リン系であればどれでもよいと思いますが、根元というよりは患部に散布するのがよろしいのでは。また、今ならば薬剤ではなく、患部を切除するという方法もありますね。ちなみに虫こぶを作っているヤエイスアブラムシは、コナラとイスノキを行ったり来たりしているのです。

  • #1

    もりやん (水曜日, 11 4月 2018 20:37)

    新芽が芽吹きウキウキ気分でいたのもつかの間、虫コブが・・・。
    遅まきながら、明日モスピランを根元に撒くとしよぅ
    これぞと言うのがありますでしょうか?

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