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フジ/ふじ/藤
Japanese wisteria(Wisteria floribunda)
【フジとは】
・本州、四国、九州の山野で普通に見られるマメ科フジ属のつる性植物。通常は他の木に絡みついて育つが、庭に用いる場合、「藤棚」を作り、花を密生させて鑑賞する。
・開花期は4~6月で花房は30~90センチほど垂れ下がる。日本固有のフジの花は紋所のデザインになり、「古事記」にもその名があるほど日本文化との関係が深い。開花期の幻想的な風景は多くの外国人観光客をも魅了する。
・単にフジという場合、ノダフジ(野田藤)とヤマフジ(山藤)の両方を含む。両者はツルの巻き方が異なり、ノダフジは上から見て右巻き、ヤマフジは左巻きになる。ヤマフジは主に近畿地方以西の低山に見られる種で、花房は10~20センチ程度と短かく、幹はノダフジほど太くならない。また、花が大きいことや全ての小花が同時に開くことでノダフジと見分けることができる。
・「フジ」という名の由来には諸説ある。長く垂れ下がる花の様子を「フキチリ(吹き散り)」または「フサタリハナ(房垂花)」と呼び、それらが転訛してフジになったとする説、また、ツルが鞭(ムチ/ブチ)の材料になることから「ムチ/ブチ」がフジに転訛したとする説など。
・「ノダフジ」は、大阪市の野田地方が本種の名所であったことから。天然記念物に指定される「牛島のフジ」などフジの名所は数多い。
・花ほどには話題にならないが、晩夏から初秋にかけて熟していく豆のような実にも鑑賞価値がある。でき始めは光り輝き、乾燥するに従って黒褐色に変わる。中には直径1センチほどの種子が数個あり、1月頃になって乾燥すると自然に裂開して遠くまで飛散する。種は煎って食用にすることができる。
・フジとクズ(葛)が絡み合ってどうにもならない様を葛藤という。フジの蔓は丈夫で簡単いは切れないことで知られており、昔から漁網や山登りのための臨時のロープに使われてきた。
・樹皮の繊維から作った藤布(ふじふ)は日本最古の織物の一つであり、綿を栽培できない地では手間を掛けてこれを作った。京都府宮津市にはその製法を伝承する集落、上世屋がある。
・フジは樹齢が長く、長寿や繁栄の象徴とされる。フジを家紋とする藤原氏に縁の深い春日大社には、樹齢700年とされる「砂ずりの藤」がある。
・フジの若葉は鮮やかな黄色を染める染料として使われる。
【フジの育て方のポイント】
・寒さにやや強く、北海道まで植栽できる。
・成長が早く樹形は乱れやすい。一般家庭では棚を設け、定期的に剪定するのが必須。芽を出す力は強く、剪定には十分耐える。
・湿気があり、かつ、水はけの良い場所が望ましい。
・花つきをよくするためには、豆果を早期に除去する。
・コミスジやウラギンシジミという蝶の食草であり、コミスジの幼虫は葉脈と葉身の一部を残してカーテン状のものを作って潜む。ウラギンシジミの幼虫は主に蕾と花を食べ、食べる部位に体色を合わせながら育つ。
【フジの園芸品種】
・「長崎一才」
盆栽など鉢物に多く使われるノダフジの園芸品種。花つきが良い。
・「紫花美短」、「白花美短」
いずれもヤマフジの園芸品種で、花房が短い。ほかにもいろいろな品種がある。
フジの基本データ
【分類】マメ科 フジ属
落葉つる性樹
【別名】ノダフジ
【学名】Wisteria floribunda
【成長】早い
【移植】難しい(根をすべて掘り出す)
【高さ】─
【用途】公園/棚/鉢植え/盆栽
【値段】1200円~