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カシワ/かしわ/槲・檞
Daimyo oak
【カシワとは】
・ブナ科の落葉高木で日本全国に分布する。食べ物を包むのに使われるほど大きな葉が南国風の印象を持つが、比較的寒冷な地に多く、かつては北海道の十勝平野に大木が群生していた。アジア大陸東北部、朝鮮半島、南樺太や南千島にも自生する。
・カシワは落葉樹だが、翌春に新葉がそろうまでは古い葉が枝についたままであることから、「葉守りの神」が宿る縁起の良い木とされた。また、古い葉と新しい葉が絶え間なく入れ替わることから「葉(覇)を譲る」家運隆盛を象徴する木として、端午の節句の柏餅に使われようになった。(ただし、このような性質を持つのはカシワに限らず、アベマキやヤマコウバシも同様。また、「葉を譲る木」としてはユズリハも知られる)。
・旧暦で生活していた頃はカシワの新葉を柏餅に使っていたが、現代では一部地域を除き、前年の初夏に収穫し、乾燥保存していた葉あるいは韓国や中国からの輸入品を柔らかく煮た物を使っている。地方によっては端午の節句にカシワではなくサルトリイバラの葉を使った「五郎四郎餅」を用いる。
・カシワの葉は縁が波状になっているのが特徴。長さは7~15センチほどの楕円形で、ブナ科の仲間では最大の葉になる。葉の大きさは場所によっていろいろだが長さ30センチを越すものもある。その葉陰は生き物にとって格好の隠れ家であり、夏にはカエルやセミなどがよく集まる。
・幹はコルク質で耐火力があるため、山火事になっても生き残るカシワがある。これもカシワの縁起の良さを語るのに一役買っており、家紋としてカシワを使うケースも多い。樹皮にはタンニンを多量に含み、かつては皮なめしや漁網の染料に使っていた。
・あまり話題にはならないが、桜の花が終わったころに画像のようにクヌギやコナラと似た花を咲かせる。垂れ下がるのは雄花で、雌花は葉の中央にある。
・カシワという名前は、①「炊葉(かしきは)」あるいは「食敷葉(かしわ)に由来し、食物を包んだり、食物の下に敷いたことにちなむ。②葉が堅いことから「堅し葉」に由来する、といった説がある。漢字表記は檞あるいは槲が正しく、誤用されがちな柏は本来、全く別物のコノテガシワを表す。
【育て方のポイント】
・高さ3m程度の電柱状に剪定している家庭が多いが、本来は成長と共に横への広がりも大きくなるため、余裕のあるスペースに植えるのが望ましい。剪定を繰り返すと無骨な樹形となる。
・寒さに強く、日本全国に植栽できる。
・肥沃な土地を好む。
・いつまでも落葉しない葉が、美的には美しくないことなど、好みが分かれる木である。
【カシワに似ている木、類似種、園芸品種】
・アカガシワ(アメリカガシワ・ビンオーク)~葉が大きく切れ込み、紅葉が美しい。北アメリカ大陸で普通に見られる。
・カシワの品種としては、ハゴロモガシワ、ホウオウガシワ、クジャクガシワなど、葉に独特の色や切れ込みを持つものが知られる。また、ナラとカシワの中間的な性質を持つナラガシワやミズナラとカシワの雑種としてモンゴリナラがある。
・同じように食物を包むのに使われる葉には、ホオノキ、ナラガシワ、オオシマザクラなどがある。昔は食物を盛る葉は全てカシワと呼んでいた。
カシワの基本データ
【分類】ブナ科 コナラ属
落葉広葉 高木
【学名】Quercus dentata
【別名】オオカシワ/モチカシワ
カシワギ/ハハソ
【成長】早い
【移植】やや難しい
【高さ】15m~20m
【用途】縁起木/雑木の庭/盆栽(一部の変種)
【値段】1500円~