庭木図鑑 植木ペディア > エンジュ
エンジュ/えんじゅ/槐
Chinese scholar tree
【エンジュとは】
・中国北部を原産とするマメ科クララ属の落葉樹。性質が丈夫で管理に手間がかからないことや木全体に薬効があることから、日本全国に街路樹あるいは庭木として植栽され、普及している。エンジュという名は、イヌエンジュの古名「エニス(恵爾須)」が転訛したものとされる。
・学名に「japonica」とあるのは日本産と勘違いされたため。古代中国(周)では朝廷にエンジュを三本植え、大臣がそれに向かって座した格式の高い木とされる。現代の中国でも縁起の良い木とされ、「出世の樹」「崇拝の樹」「尊貴の樹」として中庭に植えることや、記念樹や魔除け、安産の守りに使うことがある。
・エンジュが日本に渡来した時期は不明だが、神功皇后(170~269年)の伝説に、安産の呪いとしてエンジュを植えたとあり、古くから植栽される。明治10年代には東京の街路樹として使われ始め、現代でも山の手通りなどに見られる。
・葉は長さ2~5センチの卵形。4~7対が羽根状に集まり、枝から互い違いに生じる。表面は深緑色で裏面は白っぽい。茹でて苦味を取り除いた新葉は食用に、乾燥させたものは茶や湿疹の薬にされる。
・7~8月にかけて咲く花は淡い黄色の蝶型。花の一つ一つは1~1.5センチほどと小さいが、枝先にまとまって大きな円錐状に咲くため、遠目からは木の上に煙が立ち上がっているように見える。ルチンが含まれる蕾は「槐花(かいか)」と称し、止血や黄色の染料に使われる。
・秋には数珠のようにくびれた果実が枝先から垂れ下がる。長さは4~7センチほどで、内部は肉質で触ると粘りがある。漢方では乾燥させた果実を内服すると痔疾に効果があるとする。
・材は器具、楽器、家具に使われ、灰色の樹皮を煎じたものは腰痛の薬に、根は「苦参(くじん)」という漢方薬になる。苦参はアルカロイドなどを含み、解熱や利尿に効果があるとされる。
・変種のシダレエンジュは曲がりくねった枝の形を竜の爪に見立て、中国では「竜爪樹」と呼ばれる。エンジュよりもさらに縁起の良い木として特に好まれ、京都の二条城や東京の代々木公園に見られる。
【育て方のポイント】
・エンジュは基本的には肥沃な土を好むが、荒地に最初に育ついわゆる「パイオニア植物」であり、よほど乾燥が厳しくなければ痩せ地でも育つ。
・耐寒性があるものの、植栽適地は関東以西となる。
・枝葉を大きく広げるため、エンジュ本来の樹形を楽しむにはある程度のスペースが必要となる。剪定には強いが自然樹形が美しく、剪定によって形が乱れやすい。
・移植を嫌うため植え場所を慎重に選ぶ必要がある。
・病害虫には比較的強いが、さび病にかかることがある。
【エンジュの品種】
・シダレエンジュ(画像)
枝が垂れ下がり、なおかつ曲がる。
・イヌエンジュ(=クロエンジュ)。
北海道又は本州北部に分布する日本原産の木で、単にエンジュと呼ばれることもある。花や葉の裏側に細い毛が密生すること、樹皮が黒っぽく、縦に裂けないこと、実が肉厚にならず、平らなサヤになることがエンジュとは異なる。
・この他エンジュには赤や青の花を咲かせる品種がある。
エンジュの基本データ
【分類】マメ科/クララ属
落葉広葉/高木
【学名】Sophora japonica
【別名】エニス/エニスノキ
コヤスノキ/カイジュ
キフジ/ホンエンジュ
【成長】やや早い
【移植】難しい
【高さ】10m~25m
【用途】街路樹/公園/器具材
【値段】1000円~