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エノキ/えのき/榎
Chinese Hackberry
【エノキとは】
・北海道を除く日本全国に自生するニレ科の落葉樹。枝分かれが多く、大きな緑陰を作るため、ケヤキやムクノキなどとともに各地の一里塚や神社仏閣に植栽され、その巨木が今日でも見られる。根張り(地際の幹)の美しさは日本の樹木でもナンバーワン。日本以外では中国の中北部、台湾及び朝鮮半島に分布する。
・エノキという名の由来には諸説あるが、①信長、家康、秀忠、家光のうちの誰かが、(マツ以外の)「余の木(ヨノキ)」を一里塚に植えるよう命じ、これに応じる形で植えられたのがこの木であったためヨノキが転じてエノキとなった、②縁起の良い木を意味する「嘉樹(ヨノキ)」が転じてエノキとなった、③秋にできる朱色の実は小鳥や森の生き物に人気が高く、「餌の木」からエノキとなった、などの説がある。漢字の榎は日本で作られたものであり、中国では「朴樹」と表記する。
・葉は長さ4~10センチ、幅3~6センチほどで枝から互い違いに生じる。葉の上半分のみにギザギザがあること、付け根付近から葉脈が3本に分かれることが特徴だが、森の生き物に人気が高く、黄葉期まで形をとどめていることは珍しい。
・国蝶であるオオムラサキやヤマトタマムシ、ゴマダラチョウ、テングチョウには欠かせない餌であり、これらはエノキの葉を食べて育ち、エノキの葉の裏でサナギとなる。蝶だけでなく、食糧難の時代にはエノキの若菜を米と一緒に炊き込んで「糧飯(カテメシ)」として人間が食べることもあった。
・エノキは「縁」に通じることから「縁結びの木」あるいは「縁切りの木(縁切りエノキ)」として使う俗信があった。縁を結ぶにはエノキに願をかけ、縁を切る場合は、人知れずそっとエノキの葉を食べると良いらしい。「縁の木」と呼んでありがたがり、御神木とする場合もある。
・現代人にとっては葉や実よりも、株元や枯れ枝にできるエノキダケの方が人気が高い。なお、エノキダケは榎に限らずコナラやカキなど多様な落葉樹の腐食部に寄生する。
・春(4~5月)になると芽吹きと共に緑色の小さな花を咲かせるが、あまり目立たない。雌雄同株だが、花には雌雄(あるいは両性花)がある。雌花の後には球形のカラフルな実ができ、9~10月に熟す。直径は6~8ミリ程度で果皮には甘味があり、昔の子供はコレをおやつにした。
・エノキの幹は灰色で直立し、最大で直径1.5mほどになる。樹皮はケヤキやムクノキのように剥離しないが、表面にイボイボが多く、触れるとザラザラする。
・大木となるエノキからは大きな板を取ることができるものの、その材はねじれやすく、材木としての評価は低い。ただし、頑丈であるためカマツカと同じように農具(カマなど)の「柄」を作るのに使われ、「柄の木」=エノキと命名されたという説もある。
【育て方のポイント】
・日当たりが良ければ土質は選ばない。乾燥地でも湿地でも育つが、基本的には湿気を好み、かなりの湿度にも耐える。このため、水際の添景や海辺の防風にも使われる。
・枝分かれが多く、繁茂しやすい。芽を出す力が強く、剪定に耐えるが、大木であり、自然樹形を楽しむには広いスペースが必要。他の木とバランスを取るのが難しく、狭い庭でこじんまりと管理することはできない。
【エノキの品種】
・エゾエノキ
実が黒く熟し、葉柄が長いのが特徴。名前とは裏腹に日本全国の山地に見られるが、寒い地方にやや多い。
・シダレエノキ
エノキの中でも枝が垂れ下がる樹形を持つ個体を特にシダレエノキという場合がある。長野県上田市の「東内のシダレエノキ」は国の天然記念物に、岐阜県中津川市にある諏訪神社のシダレエノキは、信州の木百選に名を連ね、観光名所となっている。
・エノキとムクノキの見分け方
ムクノキは老木になると幹に穴(洞)が開きやすく、奇怪な形の幹になるものが多い。こうした特徴はエノキやケヤキにはほとんど見られないため、見分ける際の手掛かりになる。
しかし、もっとも簡単な見分け方は、葉の表面で自分の爪を磨いてみることである。ムクノキの葉はザラザラしており、爪を磨くことができるが、エノキはツルツルしていて爪磨きにはならない。
また、秋であれば両者の果実の違いで区別できる。できはじめのエノキの実は緑、赤、黄色が入り混じってカラフルになるが、ムクノキの実は緑、黒、褐色と一貫して地味。実の直径はムクノキが明らかに大きい。
エノキの基本データ
【分類】ニレ科/エノキ属
落葉広葉/高木
【学名】Celtis sinensis
【別名】エノミ/エノミノキ
ヨノキ/ヨノミ/アブラギリ
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】10m~25m
【用途】公園/雑木の庭/並木/盆栽
【値段】800円~
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榎(エノキ) 苗木 50〜70cm内外 【植木・庭木】 |