庭木図鑑 植木ペディア > ウルシ
ウルシ/うるし/漆
Lacquer tree
【ウルシとは】
・中国やインドなどを原産とするウルシ科の落葉樹。縄文時代前期(約6,000年前)に日本へ渡来し、樹液が塗料や接着剤として全国で使われた。江戸時代には特に各藩がウルシの植栽を奨励したため、その名残が人里近くの野山に見られる。日本の山に自生していたウルシは漆塗りに用いることができず、ヤマウルシと呼んで区別する。
・ウルシという名の由来には、幹に傷をつけると汁(樹液)がしたたることを意味する「閏汁」あるいは「塗る汁」によるとする説や、紅葉の美しさを意味する「麗しの木」によるとする説がある。
・幹や枝葉を切った際に出る樹液は乳白色だが、乾燥してくると黒色に変わる。樹液にはウルシオールという成分が含まれ、これに触れるとアレルギー性皮膚炎を引き起こし、人によっては水ぶくれができる。樹液を採取する専門職は「漆掻き」と呼ばれ、高度な技術が求められる。
・ウルシの葉は、先端が少し尖った小葉が3~7対ほど集まって羽根状になる。秋になるとヤマウルシは紅葉するが、本種は黄葉するという違いがある。
・雌雄異株で、初夏(5~6月)に黄緑色の小花を咲かせ、秋には楕円形でクリーム色の実ができる。実の表面はツルツルしており、ヤマウルシのそれとは区別できる。実は熟すとクリーム色になり、蝋を採取するのに使われ、炒って粉にしたものはコーヒーの代用になるという。
・ウルシは真っすぐに伸び、大きな木では直径1m近くに達する。樹皮は暗い灰色で年齢を経るに従って縦に裂け目が入る。材はニガキやハゼノキのように黄色く、柔らかだが耐水性があり、寄木細工や象嵌などに使われる。
【育て方のポイント】
・樹液を採取する(=漆掻き)ための特用樹であって、個人の庭に植えることはほとんどない。稀に紅葉(黄葉)を鑑賞するためにあえて植栽されることがあるものの、寒冷地でなければ半端な黄葉に終わる。
・樹勢は強く、日向であれば土質を選ばずに育つ。会津塗りや津軽塗りが有名なように、漆塗り用としては寒い地方の方が品質が良い。
・ウルシの仲間ではスモークツリー(黄櫨)が庭木として使われる。ただし、ウルシほどではないものの、スモークツリーにもウルシオールが含まれるため、肌が敏感な人は避けた方がよい。
【ウルシに似ている木】
日本に自生するウルシで、葉はウルシよりも幅が狭くて小さい。樹高も3m程度で、より小さい。
・ツタウルシ
ウルシの基本データ
【分類】ウルシ科/ウルシ属
落葉広葉/高木
【学名】Rhus verniciflua
【別名】─
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】7m~10m
【用途】漆汁の採取
【値段】800円~