庭木図鑑 植木ペディア > ネズミサシ
ネズミサシ/ねずみさし/鼠刺
Needle juniper
【ネズミサシとは】
・岩手県以南の本州、四国及び九州に分布するヒノキ科の常緑針葉樹で、山地の尾根や瀬戸内海の沿岸に多い。ネズ、ムロ(榁)あるいはトショウ(杜松)とも呼ばれる。朝鮮半島や中国の北部及び東北部にも自生が見られる。
・ネズミサシという名は、ネズミが刺さるかのような葉の鋭さを表すだけでなく、実際にこの葉を鼠の通り道に突き刺して、その被害を防いだことに由来するという。
・葉は長さ1~3センチほどだが3本一組で、それぞれが異なる方向に向かって伸び、だらしなく垂れ下がるが、触れれば相当痛い。別名の「ムロ」は古語で、葉が密生する様をいう。
・雌雄異株で春(4~5月)に黄緑色の花を咲かせる。あまり目立つ花ではないが、花言葉(「保護」)もある。花の後には球果(果実)ができ、翌年または翌々年の秋になると褐色に熟す。
・乾燥させた実は「杜松実(としょうじつ)」、「杜松子(としょうし)」あるいは「モロンジョ」という生薬になり、利尿、尿道炎、リュウマチ、神経痛、風邪等に効果があるとされる。
・カクテルのベースになるジン(酒)は、ヨーロッパを原産とするヨーロッパネズの実を集めて蒸留酒に香り付けをしたもので、元来は利尿剤として医者が作ったものとされる。ヨーロッパではネズミサシではなく「モロンド」という格好いい名前が付いている。
・ネズミサシの直径は最大で1mほどになり、材は針葉樹としては重くて硬い。樹脂分が多く、風雨にさらされても腐りにくいため、和白檀と称して仏像、床柱、建築の土台、船舶などに使われるが流通は稀。なお、混乱しやすいが良質な材木として知られるネズコはクロベのことであり、本種とは異なる。
【ネズミサシの育て方のポイント】
・関東以西から九州までの広い範囲に分布する。自生地は乾燥した痩せ地が多く、湿地では育てられない。
・典型的な陽樹(=日向を好む木)であり、日陰では生育が悪い。
・病害虫の被害はほとんどないが、公園などで見かけるネズミサシのうち、健全に育っている物は珍しい。これは日照不足と強剪定が主な原因。ネズミサシは剪定に弱く、下手に剪定するとどんどん樹形が乱れて観賞価値がなくなる。
【ネズミサシに似ている木】
・ハイネズ
「這いネズ」であり、ハイビャクシンと同じように匍匐して育つ。北海道から九州までの海岸地帯に見られる。造園用としては原種よりも普及している。
・どうしてもネズミが持つドブ臭いイメージが強いものの、ブルーカーペット、ブルースター、ブルーパシフィック、ウィルトニーなど人気のコニファーも、元をたどればネズミサシ属に属す。
|
ネズミサシの基本データ
【分類】ヒノキ科/ビャクシン属
常緑針葉/低木
【漢字】鼠刺(ねずみさし)
【別名】ネズ/トショウ
ムロ/ムロノキ/モロノキ
【学名】Juniperus rigida
【英名】Needle juniper
【成長】やや早い
【移植】難しい
【高さ】5m~15m
【用途】公園/薬用木
【値段】1500円~