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イチイ(一位)
Japanese yew










【イチイとは】
・日本及び中国東北部、シベリア東部を原産とするイチイ科の常緑針葉樹。まっすぐに伸びる幹と綺麗な円錐形を保つ樹姿が美しい。北海道や東北北部などの寒冷地ではアイヌ語の「オンコ」という名で呼ばれ、和風庭園の主木、生垣、植え込みの定番となっている。
・葉は羽根状で、カヤあるいはメタセコイア、センペルセコイアを小型にしたような形だが、柔らかでチクチクしない。
・雌雄異株で3~4月に開花するがほとんど目立たない。メスの木になる赤い実の果肉(仮種皮)は甘く、食用や果実酒用となるが、その中に包まれる種はタキシンというアルカロイドを含む。有毒性であり、飲み込むと痙攣を起こし、最悪の場合、呼吸困難で死に至ることもある。
・かつてはイチイの材を用いて、位が高い人が使うシャクを作ったためイチイ(一位)と名付けられたという説と、イチイの材が他の木材よりはるかに赤い(=緋色)ため、「一番の緋色」から「一緋」となったという説がある。
・イチイの材は緻密で、アイヌ人はこれを利用して矢を作った。現代では表札、建材、彫刻材に使われる。彫刻としては特に岐阜高山の一刀彫が名高い。また、イチイは鉛筆の材料にも使われるが、日本産の木で鉛筆に使うことができるものは数少ない。
・イチイの枝葉は民間療法に使われ、糖尿病、高血圧、肝臓病に効果があるとする俗説があるものの、イチイは果肉以外すべての部位にアルカロイドを含むため、素人が容易に用いることはできない。
【育て方のポイント】
・沖縄以外の全国に分布するが、寒い地方での活用が多く、暖かい平地では生育が悪く、暖地では移植も難しい。
・日陰を好む代表的な「陰樹」だが、成木は日向でも育つ。また、肥沃な土地を好み、痩せ地ではやや生育が悪い。
・手入れをせずとも木の姿が整いやすいため、手入れのしづらい場所の垣根などに向く。他方、萌芽力があり、刈り込みによって形を作りやすいため、トピアリーに使うことができる。ただし、強い剪定は苦手であり、特に関東以西の暖地では成長が遅いため、むやみに刈り込むのは避けた方がよい。
・病害虫に強いが、まれにハダニ、カイガラムシの被害に遭うことがある。
・雌雄異株であり、実を楽しむためには雌の木を植える必要がある。
【イチイの品種】
・葉が黄色っぽいオウゴンイチイが知られる。

【似ている木】
・キャラボク
垣根に多用されるキャラボクはイチイの変種であり、日本海側により多く見られる。両者はよく似ているが、キャラボクの葉が四方八方へ螺旋状に発生するのに対し、イチイは二列に水平に並ぶため見分けやすい(ただし枝先にある葉は螺旋状になる)。キャラボクは放置すると樹形がクネクネと乱れるが、イチイはスッキリと端正な姿を保つ。一般的に寒い地方にはイチイ、暖かい地方にはキャラボクが適するが、庭木としては背が高くなりにくいキャラボクの方が好まれる傾向にある。
・イチイガシ(ブナ科)
関西地方に多い樫の仲間だが、地方によってはこれをイチイガシと呼ぶ。しかし、このイチイとは関係がない。
・センペルセコイア(ヒノキ科)
セコイアスギ、レッドウッドなどとして知られる巨木だが、葉が似ているため別名をイチイモドキという。こちらも分類学上はまったく関係がない。
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イチイの基本データ
【分類】イチイ科/イチイ属
常緑針葉/高木
【学名】Taxus cuspidata
【別名】オンコ/アララギ
【成長】遅い
【移植】根が荒く、やや困難
【高さ】10~20m
【用途】シンボルツリー/垣根/トピアリー
【値段】1000円~5000円