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キリ/きり/桐
Paulownia/Empress tree
【キリとは】
・中国中部、朝鮮半島、鬱陵島(韓国)あるいは日本のいずれかを原産地とするゴマノハグサ科の落葉樹。大木になるのが早いため、材木に使う有用樹として古くから植栽された。日本では北海道南部から九州まで分布するが、原産地ははっきりしない。
・キリの材は耐湿性が高く、かつては女児が生まれたらキリの木を庭に植え、結婚のときにその材を使って箪笥を作って嫁ぎ先に持たせるという風習があった。勿体ぶって切らずにおくと、やがて材の内部が空洞化して使い物にならなくなるため、キリの木に関しては「植えないバカに切らぬバカ」という諺がある。
・キリが高級な下駄や箪笥、長持の材料となるのは、国産材の中で最も軽量かつ柔軟で扱いやすい上、狂いがなく、乳白色の木目が美しいため。木目の美しさを表す「木理」から「キリ」に転じたという説がある。また、キリの材は水分を多く含み、火事になってもキリの箪笥に収納した物は燃えないという。建具、長持、小箱、下駄、琴や琵琶などの楽器、羽子板、人形、仮面などにも使われる。
・現代では箪笥に使わず放置され、種子が飛散して野生化したものが東北や関東北部を中心に見られる。岩手県では県の花に指定しており、かつて「南部の国」といわれた同県岩泉盆地を中心に生産された「南部桐」や、福島県の「会津桐」はその美しさで特に知られる。
・桐の葉は直径10~30センチにも及ぶ大きなスペード型あるいは五角形で、3~5つに浅く裂けることもある。葉の縁にギザギザはなく、表面は粘着性の毛で覆われ、ビロードのような質感を持つ。
・雌雄同株で5月~6月ころ、葉に先立って開花する。淡い紫色の花は画像のとおりゴージャスで、昔から紋様や紋所のモチーフになるが、高いところに咲く上、強風で散りやすく、間近で鑑賞するのはやや難しい。
・花後には先の尖った卵形をした直径2~3センチの果実ができる。果実は熟すと二つに割れ、中から翼のある多数の種子が飛び出す。
・キリの木の樹皮は灰色で樹齢を重ねると表面にポツポツと模様が入る。直径は最大で50センチほど。成長が早く、切られてもすぐに芽を出すため、「切る」が転化して命名されたとする説もある。
【キリの育て方のポイント】
・水はけの良い肥沃な土地を好む。
・日当たりを好むが西日は苦手とする。
・枝の数は少なく、樹形は大味になりがち。また、放置すれば横にも幅が出てくるため、スペースに応じて定期的に剪定する必要がある。樹形はまとまりにくく、狭い庭には不向きだが、大きな葉が日陰を作るため公共のスペースには緑陰樹として使うことができる。
・蕾は前年の秋に作られるため、冬期に枝を切り詰めると花数が少なくなる。
・時折、テングス病の発生が見られる。見付け次第、患部を根元から取り除く。
【キリに似ている木】
・キリと名の付く木には、イイギリ、アオギリ、ハリギリなどがある。
・台湾にはココノエギリ、タイワンウスバギリが生じ、かつてそれらを南米に植栽したものが、南米桐として我が国に輸入された。
キリの基本データ
【分類】ゴマノハグサ科 キリ属
(ノウゼンカズラ科・キリ科説もあり)
落葉広葉 高木
【学名】Paulownia tomentosa
【別名】ハナギリ/キリノキ/ヒトハグサ(一葉草)
【成長】早い
【移植】簡単
【高さ】8~10m
【用途】シンボルツリー/街路樹
【値段】1000円~