庭木図鑑 植木ペディア > ニセアカシア
ニセアカシア/にせあかしあ
Black locust
【ニセアカシアとは】
・北アメリカを原産とする落葉広葉樹で、単にアカシアと呼ばれることも多いが、正式名称はハリエンジュであり、エンジュに似た葉を持ち、枝や幹にトゲがあることに由来する。涼しげな葉の様子や初夏に咲く優雅で香りの高い花が好まれ、街路や公園に使われる。
・日本へ渡来したのは明治初期で、北海道の開拓使が北米から輸入し、札幌農学校の畑に試験的に植えたものを起源とする説と、東京府下(当時)の練兵場に植えられたものを起源とする説がある。
・丈夫で成長が早く、砂防や土地改良のため山奥に植栽されたものが河川を伝って広がり、各地で野生化した。現代では路傍や川原、雑木林などで頻繁に目にする。
・エンジュなど他のマメ科の樹木と同様、根に「根粒菌」という菌を共生させており、根が水に浸かった状態でも育つ。また、タケやササのように横に張った根の途中から新たな幹を立ち上げる性質を持つことから、条件の悪い土地にも耐える。
・爆発的な繁殖力を持つことから環境省がアメリカザリガニやワニガメなどと同じ「要注意外来生物リスト」に入れている一方、養蜂家が保護に努めるなど、立場が難しい木となっている。
・開花は5月~6月。同じころに白い花を咲かせるトチノキが上向きに咲くのに対して、こちらは蝶型の白い花が長さ15~20センチほどの房状に垂れ下がって咲く。各地に花の名所があるが、秋田県鹿角郡小坂町では例年「アカシアまつり」が開催される。
・花は満開になると周囲に甘い香りを放つが、その香りは香水に使われるほど。観賞用としても十分に美しいが、開ききる前にこれを摘み取って砂糖菓子、天婦羅や和え物にして食べることができる。また、ミツバチの良質な蜜源になることでも知られ、皮肉なことに日本産のハチミツの半分近くは外来種であるニセアカシアから採取されるという。
・花が咲く小枝には一対の鋭い針(棘)があり、冬芽はそこに包まれて越冬する。また、木が若い場合、刺は幹にも生じる。幹は最大で直径1mほどに達する。材は硬くて耐久性があるものの、不純物の多さから加工が難しく、材木として使われることは少ない。
・葉は3~9対の小葉が集まってでき、全体としての長さは30センチほどになる。ネムノキのように夜になると閉じるのが特徴。晩春から夏にかけて採取した若葉は炒めて食べることができる。また、日干しした葉を煎じて飲めば利尿作用があるという。葉は秋に黄葉するが、それほど綺麗ではない。
・葉の様子が熱帯性のアカシアに似るためニセアカシアと名付けられたが、本種とは花の色も形も違う。
・秋になるとサヤエンドウのような実ができ、落葉後も長期間、枝に垂れ下がる。長さは5センチから10センチ程度。中には黒褐色の種子が4~7粒ほど入っている。
【育て方のポイント】
・非常に丈夫な性質を持ち、北海道から九州までの幅広い地域に適応する。樹木としての寿命は比較的短いが、乱雑に枝や幹を切っても再生し、切り倒した切り株からは100本以上の新梢が生じる。これに加えて上述のとおり根からも発芽するという性質を持つため、人為的に植栽するには課題が多い。
・貧栄養の砂地、やせ地であっても日当たりが良ければ育つ。
・大気汚染や病害虫に強いがアブラムシが発生することもある。
・根の張りが浅いこと、成長が早いため材が脆いことから風に弱く、強風で倒れたり、折れたりすることがある。
【エンジュとニセアカシアの見分け方】
・文字どおり枝に針(棘)があるのがニセアカシア(=ハリエンジュ)で、エンジュには棘がない。また、ニセアカシアは葉の先端が尖っているが、エンジュは凹んでいる。ちなみに、棘のないトゲナシニセアカシアやイギリストゲナシニセアカシアという品種もある。
ニセアカシアの基本データ
【分類】マメ科 ハリエンジュ属
落葉広葉 高木
【学名】Robinia pseudoacacia
【別名】ハリエンジュ/アカシア/ハゲシバリ
【成長】かなり早い
【移植】簡単
【高さ】10m~25m
【用途】公園/街路樹
【値段】1000円~