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トチノキ(橡)
Horse chestnut















【トチノキとは】
・北海道から九州まで日本全国の山地に見られる落葉高木で日本の特産樹。文字どおり栃木県では木の県として指定している。樹形が自然に整いやすく、新緑や秋の黄葉が美しいことなどから全国の街路樹、公園に利用されてきたが、秋に落ちる実が往来の妨げになるとして、近年は利用が減っている。
・晩夏から初秋に実る「栃の実」には蛋白質が豊富に含まれる。縄文時代の遺跡からも出土されるなど日本人とは関係が深く、戦後の食糧難には庶民の貴重な栄養源となり、嫁入りの財産にした地方もあるほどだった。また、トチノキの材は柔らかくて加工しやすく、木目も美しいとあって、ケヤキと並んで算盤、擂粉木、臼、盆、椀などに使われることが多い。
・栃の実は現代でも「栃餅」として餅米と共についた物や、粥にしたものが食用される。ただし、栃の実にはエゴノキやサイカチと同様にサポニンやエスクリンといった毒性の物質が含まれ、味も苦味がある。十分な灰汁抜き(精製)をしないと下痢、胃腸炎、脱水症状に陥ることがあり、こうしたことから栃の実は栗よりも劣るという意味で「馬栗」と呼ばれる。(英語名はこの馬栗に由来する)
・実は食用のみならず、上記のサポニンを利用して石鹸代わりに使ったり、焼酎に漬け込んだものや焼いて油で練ったものを塗り薬に使っうなど用途が多い。
・5月~6月にかけて写真のような円錐形の花を咲かせるが、ある程度の大木にならないと花を見ることはできないため観賞はしにくい。よく見ると小さな花の集合体であり、ミツバチが好んで集まる「蜜源」となる。
・冬芽は大きく(1センチ程度)、粘液に覆われて黒光りするため冬の庭園では異彩を放つ。冬芽の粘液は生薬に使われる。
・トチノキという名の由来は諸説あるが、たくさんの実がなる木という意味合いを持つとされる(トは「十」を、チは「千」を表す。)。豊作、凶作の波がなく、毎年安定してたくさんの収穫が期待できるが、強風で落下しやすいのが難点。
・観葉植物「パキラ」を大きくしたような葉は、5枚~7枚が1つのセットになっているため漢字名で「七葉樹(しちようじゅ)」と表記することもある。
【育て方のポイント】
・高さ20メートル以上にもなる高木で、横枝も張るため、狭い庭にはあまり向いていない。木陰を作ることを目的に街路樹や公園樹として使われることが多いが、上述のとおり実の落下が問題視されることもある。
・基本的には日向を好むが、日陰にもやや強い。病害虫にはかなり強い。
・自生地は湿潤な沢沿いなどであり、乾燥にはやや弱く、湿気の乏しい場所では8月ころから黄葉し始める。
【類似種との見分け方、品種】
・マロニエ(西洋トチノキ)
バルカン半島を原産とする近縁種でパリの街路樹が有名。トチノキよりも葉の皺が多く、縁のギザギザが大きい。また、トチノキの新芽がネバネバしているのに対して、マロニエの新芽は乾いている。
・アカバナトチノキ
北アメリカ原産で花は鮮やかな紅色をしている。
・ベニバナトチノキ
マロニエとアカバナトチノキの雑種。果実にトゲがある。トチノキに比べて葉の表面の皺が多い。花色はアカバナトチノキよりも薄い。
・斑入りトチノキ
葉に「三光斑」と呼ばれる模様が入る。

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トチノキの基本データ
【分類】トチノキ科 トチノキ属
落葉広葉樹 高木
【学名】Aesculus turbinata
【別名】クリトチ/ウマグリ
【成長】やや早い
【移植】やや難しい
【高さ】10m~35m
【用途】公園/街路樹
【値段】1000円~10000円程度