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センリョウ/せんりょう/千両
Chloranthus
【センリョウとは】
・東海地方、紀伊半島、四国、九州及び沖縄に分布するセンリョウ科の常緑小低木。暖地の常緑樹林内に自生するが、和風庭園の下草の定番であり、お金にちなんだ縁起の良い名前から、正月飾りに使われることもある。日本以外でも中国からインドに至るアジア各地に分布。
・中国で「百両金」と呼ばれていた植物を日本のカラタチバナに当てはめ、これを百両と称したが、本種は百両よりも大きく育ち、果実がたわわに実ることから、千両と呼ばれるようになった。漢名は草珊瑚でかつての漢字表記は「仙蓼」。縁起を担いで「千両」と書くようになったのは江戸時代初期のこと。
・しばしばマンリョウとの対比でセンリョウになった旨の説明がなされるが、命名はセンリョウが先とされる。晩秋から初冬に稔る果実はもとより、葉の形が小判に似ているとして縁起をかつぎ、センリョウとマンリョウにアリドオシを加え、「千両、万両、有り通し(=いつも大金があるの意)」と洒落込むこともある。
・センリョウの開花は初夏(5月~7月)で、枝先に緑色の花を2~3個ずつ咲かせる。花弁や萼のない子房のみの花だが、子房の外壁には黄色い葯のある雄しべが一つずつあり、受粉後は茶変する。
・花が終わると小さな果実ができ、11月~3月にかけて赤く熟すと十字に広がる緑の葉とのコントラストが美しい。果実は直径5~7ミリの球形。頂部には雌しべの柱頭の跡が、横には雄しべの跡がそれぞれ黒く残る。
・漢名の草珊瑚は果実の様子を珊瑚に見立てたものだが、あまりサンゴらしさはない。果実は肉質で小鳥たちが好んで食べるため、たわわに稔っている期間は短い。
・センリョウの葉は長さ5~15センチ、幅2~5センチの細い卵形で枝から対になって生じる。薄い皮質で無毛。表面には光沢があるが環境によって変わりやすく、日差しの強い場所では色褪せる。
・正月飾りに出回るセンリョウは、暖地の海辺で日照を調整して栽培したもの。 関東地方では千葉県の館山が主要な産地として知られる。
・茎も無毛で複数が直立し、樹高は最大で1mほどになる。ところどころにやや膨らんだ節があり、別名を「竹節草」ともいう。冬でも地上部が消えず、緑色の葉を保つため「木」に分類され、マツと同じ構造の導管を持つが、幹(というより茎)は緑色で樹齢を重ねても木質化せず、草のような雰囲気を持つ。
【センリョウの育て方のポイント】
・直射日光は苦手とし、日向では葉が焼けて黄緑色になるが、日陰では実付きが悪い。明るめの日陰に植えるのが丁度よく、家庭では北側に使われることが多い。
・暖地性であり、植栽の適地は関東南部以西となる。高温多湿で栄養分のある土地を好み、寒さや乾燥にはやや弱い。マンリョウに比べると性質は弱い。
・剪定の必要がなく、適地に植栽すれば手間はかからない。株が大きくなり過ぎた場合は梅雨時に株元で切除すれば再生できる。柔らかな枝葉を観賞する木であり、刈り込みばさみで樹形を揃えるような剪定は不適切。
・移植も難しくはないが、実生、挿し木、株分けで容易に繁殖できる。
【センリョウの品種】
・キミノセンリョウ
黄色い実がなる品種。かつて正月飾りとしてマツにはキミノセンリョウを、ウメには赤い実のセンリョウを組み合わせるのが一般的であった。
・センリョウの栽培品種は、オオシオ種とコシオ種に大別され、大型の前者は切花用に、小型の後者は鉢物に使われる。
【センリョウに似ている木、見分け方】
・マンリョウと混同されることがあるが、センリョウの実は葉の上に、マンリョウの実は葉の下にできる。また、葉の形や出方も異なり、センリョウは葉が対になって生じる対生、マンリョウは互い違いに生じる互生となる。そもそも植物学的には両者の関係は遠く、センリョウはヒトリシズカやフタリシズカなどの多年草に近い。
・冬にできる赤い実を、お金に関連させて名付けられた下草(低木)には以下のような種類がある。(画像をクリックすると各項目に移動します)
センリョウの基本データ
【分類】センリョウ科/センリョウ属
常緑広葉/小低木
【漢字】千両(せんりょう)
【別名】センリョ
クササンゴ(草珊瑚)
ミセンリョウ(実千両)
【学名】Sarcandra glabra
【英名】Chloranthus
【成長】普通
【移植】簡単
【高さ】0.5m~1m
【用途】下草/和風庭園
鉢植え/切り枝
【値段】800円~