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ネムノキ/ねむのき/合歓木
persian silk tree
【ネムノキとは】
・東北地方以西を中心とした全国の山野に分布するマメ科の落葉樹。痩せ地に育つ代表的な樹木であり、郊外の道路沿いや川辺など至る場所で目にする雑草に近い存在だが、涼しげな葉と幻想的な花が人気であり、万葉集にも「ねぶ」として登場する。
・ネムノキの葉は羽根状で全体の長さは20~30センチほど。20~30対の小さな葉が規則正しく並ぶ。葉は暗くなると合わせるように閉じる性質があることから「眠りの木」、それが転化してネムノキとなった。
・ネムノキは朝鮮半島や中国にも自生するが、重なり合う葉の様子から中国では家庭円満、夫婦円満の象徴として庭に植える風習がある。葉は薄曇りの日や暑さが酷い時にも閉じるが、オジギソウのように手で触れただけでは閉じない。
・花期は6月~7月。開花するのは夕方で、短時間のうちにピンクの筆のような花が10~20輪ほど枝先に咲き、ほのかな甘い香りを放つ。筆の毛に見えるものの多くは雄しべ。根元は白く先端には黄色い葯がある。かつてはネムノキの開花に合わせてアズキ、ヒエ、アワを蒔き、農作業の目安としていた。
・雌しべには葯がなく、雄しべよりもやや長くて全体が白い。多数の雄しべに紛れて花の中央付近に数本あるが、雄しべが役割を終えてぐったりする頃になると姿を現す。また、花には目立たないが花弁や萼もある。花弁は合体しており、上部が5つに裂けている。
・ネムノキはマメ科であり、9~10月になると画像のとおり、平たい豆のような実が黒褐色に熟す。サヤの長さは10センチほどで、中には10~15粒ほどの種子が入っている。
・樹皮は灰褐色で滑らかだが、皮目と呼ばれる点々が目立つ。幹はまっすぐに伸びるものが少なく、乱雑な株立ち状になりやすい。成長が早いわりに材は硬く、器具や細工物に使われる。また、樹皮を煎じた汁は捻挫の湿布に、乾燥させた枝葉を煎じて焼き塩を加えたものは、手荒れや水虫の治療に使われた。
・別名をネブタノキ等というが、青森などの「ねぶた祭り」は、ネムノキやマメの葉で目を擦ることで眠気(=悪霊)を消すという伝統行事「眠た流し」に由来するという(諸説あり)。
【育て方のポイント】
・本来はイラン、南アジアを原産地とする暖地性の木であり、寒さにはやや弱いが、山形県や宮城県あたりまでなら育てられる。
・日当たりが良い場所を好み、明るく開けた場所にいち早く芽を出す。一方、日陰は苦手であり、大木の陰になるような場所では育たない。
・他のマメ科の植物と同様、根には空気中の窒素から養分を作る菌類が共生しており、養分のない土地でも育つ。ただし、乾燥には弱く、湿った場所を好む。塩害に強いため、海岸沿いの緑化、防砂、防風に使われる。
・病害虫に強いが、風通しの悪い場所ではカイガラムシの被害に遭うこともある。また、キチョウ(黄蝶)の幼虫はネムノキの葉を食餌とする。
・枝ぶりが乱雑であり、本来は庭に使うような木ではない。剪定には耐えるが、手入れによってさらに樹形を乱しやすい。また、枝を横に広げるため通行の多い場所には向かない。成長が早く移植も難しいため、植える場所は慎重に選びたい。
・ネムノキが葉を出すのは他の樹木よりも1か月程遅い(このためネムノキと名付けられたという説もある)また、花が咲くのは樹高が3mを超えてから。
【ネムノキの品種と似ている木】
・一才ネム
幼木の時期から花が咲く品種。高さ2~3mで狭い庭に向く。
・シロバナネム
白い花を付ける。寒さに弱く地植えは難しい。ギンネム、ギンゴウカンともいう。
・フイリネム
葉に白い斑が入る品種
・ヒロハネム
九州の島嶼部でまれに見られる品種。葉も花もネムノキより大きい。
・オオベニゴウカン
同じマメ科だが、ベニゴウカン属の花木であり、花は赤く球状になる。寒さに弱く地植えは難しい。
・ベニゴウカン
オオベニゴウカン同様の熱帯植物。花の形は似るが色は真紅に近い。寒さに弱く地植えが難しいため鉢物として扱う。
・エバーフレッシュ(アカサヤネムノキ)
観葉植物として人気の近縁種。別名のとおり鞘が赤い実を付ける。
・スリナムゴウカン
スリナム共和国ほかの南アフリカを原産とするネムノキの仲間。枝がツル状になり、花の白い部分がネムノキよりも多い。
ネムノキの基本データ
【分類】マメ科 ネムノキ属
落葉広葉樹 小高木
【学名】Albizia julibrissin
【別名】ネム/ネブノキ/ネブ/ネブタノキ
ネムリノキ/マッコノキ
ゴウカン/コウカギ/コウカ
【成長】かなり早い
【移植】かなり難しい
【高さ】5m~10m
【用途】花木/公園
【値段】500円~