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ナナカマド/ななかまど/七竈
Japanese Rowan

【ナナカマドとは】
・北海道から九州までの深山に分布するバラ科ナナカマド属の落葉樹。春の芽出し、新緑、秋の紅葉、雪中に残る赤い果実と四季を通じて見所があり、北国では街路や高速道路沿いに植栽されることが多い。日本原産だが近縁種はアジアやヨーロッパの各地に自生し、中国では「花楸樹」という。
・ナナカマドという名前の由来には、材が堅く、7回カマドに入れても燃え尽きないという説と、良質の炭を作るには7回かまどに入れる必要があることによるとする説がある。ただし実際にはよく燃えることが知られる。
・生け花の世界ではライデンボク(雷電木)あるいはライデンと呼ぶことが多い。この別名は、「赤い実のなる木」を意味する「赤実成り木(あかみなりき)」の「あ」が忘れられて「かみなりのき」になったことに由来するという。なお、チャンチンやキササゲにもライデンボクという別名がある。
・葉は長さ3~7センチの小さな葉が4~7対集まって、長さ15~20センチの羽根状になる。小葉は細長い楕円形で先端が尖り、縁には浅く鋭いギザギザがある。両面ともに毛は生じないが裏面は白っぽい。寒冷地では最も早く葉が展開して春の訪れを告げ、秋には美しく紅葉する。
・開花は初夏(5~7月)で、直径6~8ミリほどの小さな花が集まって直径15~20センチの房状になる。花には5枚の花弁と20本の雄しべ、そして3~4個の花柱があり純白で美しいが、ハナアブやハナバチがよく群がる。
・秋にできる果実は直径5~6ミリの球形で、枝先にまとまって垂れ下がる様は秋を代表する花材となる。果実が赤く熟すのは9~11月だが、落葉後もしばらく枝に残り、熟しきった頃にツキノワグマやツグミ、ムクドリ、ウソ、アトリ、キレンジャクなどの野鳥が好んで食べるようになる。フランスではセイヨウナナカマドを「ツグミの木」と呼ぶ。
・成長が遅いため幹の直径は最大30センチほどにとどまる。樹皮は暗い褐色で独特の臭気があり、樹齢を重ねると細長い皮目と呼ばれる凹凸ができる。材は緻密かつ重厚で、器具や細工物に使われる。
【ナナカマドの育て方のポイント】
・冷涼な地を好み、北海道では平地でも育つが、都市部などの暖地では長期に維持するのが難しい。紅葉や実なりが悪く、カミキリムシの被害に遭うことが多い。
・乾燥を嫌い、栄養分のある土を好む。
・剪定を好まず、剪定によって樹形が乱れやすい。
【ナナカマドの品種】
・タカネ(高嶺)ナナカマド
高山に分布し、背丈が大きくならない。盆栽として人気がある。
・ミヤマナナカマド
北海道~本州中部に分布する品種。ナナカマドの仲間では最も標高の高い場所に育ち、果実はジャムなどの加工品に使われる。
・ウラジロナナカマド
葉に光沢がなく、裏面は白味を帯びる品種。これもナナカマドより標高の高い場所に自生する。
・ナンキンナナカマド
関東以西に分布する樹高1~2mの低木で、別名をコバノナナカマドあるいはヒメライデンという。初夏にクリーム色の花を咲かせる。
・サビバナナナカマド
花や葉の裏面に褐色の毛が生じる。

【ナナカマドに似ている木】
・ホザキナナカマド」や「ニワナナカマド(=チンシバイ)」は同じバラ科だが、属は異なる。
・アロニア
同じバラ科の落葉樹で、近年、庭木としての人気が出始めた。アントシアニンを大量に含む黒い果実を食用とする。
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ナナカマドの基本データ
【分類】バラ科 ナナカマド属
落葉広葉 小高木
【漢字】七竃(ななかまど)
【別名】オヤマサンショウ
ヤマナンテン
ライデンボク
【学名】Sorbus commixta
【英名】Japanese Rowan
【成長】やや遅い
【移植】難しい
【高さ】5m~10m
【用途】街路樹/花材
【値段】3000円~