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ユズリハ/ゆずりは/譲葉
Yuzuriha(False Daphne)




【ユズリハとは】
・福島県以西の本州、四国及び九州に分布するユズリハ科の常緑樹。日本原産の木で主に暖地の内陸部に生じるが、樹形が整いやすいため庭園や公園にも植栽される。漢字表記は譲葉のほか、杠葉、楪
・一般的には葉を正月飾り(注連飾り、蓬莱飾り、鏡餅の敷物など)に使うことで知られる。新葉が揃うまで古葉が落ちず、新旧の葉が着実に入れ替わる様子に円満な世代交代や子孫繁栄を託したもので、縁起の良い木として記念樹に使うことも多い。
・ユズリハの葉は幅5センチ、長さ10~20センチほどの楕円形で縁にギザギザはなく、先端が急速に尖る。質は肉厚で表面には光沢があるが、裏面は粉を吹いたように青白く、16~19対の葉脈が見える。葉が大きいため遠目からは木全体がエメラルドグリーンに見え、比較的容易に他の木と区別できる。
・葉の寿命は2~3年で、6~7月にかけて一斉に新旧の葉が交代する。この性質に関してはクスノキも同じだが、古い葉が黄色くなり、入れ替えが分かりやすいため、世代交代の象徴とされる。また、ユズリハは4~6センチになる赤い葉柄も特徴だが、葉柄が緑色の品種もあり、これをアオジクあるいはアオユズリハと呼んでいる。
・開花は5~6月で新葉の展開と同時に葉の付け根から長さ4~8センチの花柄を出し、黄緑色の小さな花を咲かせる。雌雄異株で花には雄花と雌花があるが、通りすがりにはほとんど目立たず、一般的には観賞価値に乏しいとされる。雄花には8~10個の雄しべがあって雌しべはなく、雌花には一つの雌しべと退化した数個の雄しべ、小さな萼がある。
・11~12月になると直径1センチほどあるブドウのような果実がみのり、中には灰色の種子が一粒入っている。見た目は美味しそうで小鳥も集まるが、有毒物質(ダフニマクリン)が含まれており、食せば呼吸困難などを引き起こす。
・民間療法では葉や樹皮を薬用し、地方によっては若芽を正月菜とする風習もあるが、葉や樹皮にも有毒物質(ダフニマクリン、ユズリン)を含んでおり、素人が手を出すのは危険である。かつてはこれらを煎じて除虫薬として使うこともあったが、家畜が食べると起立不能、食欲不振、心臓麻痺等を引き起こすこともある。
・幹は直立し、太い枝を四方に広げる。樹皮は灰褐色で表面にはポツポツと模様が入る。材は灰色っぽいクリーム色。現代では材木としてほとんど流通しないが、重厚で耐久性がある。縄文時代には石斧の柄として使われたことが、鳥浜貝塚遺跡によって証明されている。
【ユズリハの育て方のポイント】
・庭木として観賞するためには10年以上かかるほど成長が緩やかで、幼樹のうちは比較的手をかけずに育てられる。しかし、基本的には大きく育ててこそ観賞価値のある樹形になるため、植栽にはある程度のスペースが必要となる。
・葉が大きく、常緑であるため、門際や屋敷周辺の目隠しとして使用できる。剪定には強く、枝ぶりが単純なため整えやすい。
・日向でよく育つが、日陰にも強いため、建物の北側などに利用できる。ただし、耐寒性が低いため植栽の適地は東北地方南部以西の暖地であり、寒冷地ではエゾユズリハが向く。
【ユズリハの品種】
・エゾユズリハ、ヒメユズリハ、アオジクユズリハ、フイリユズリハ(黄緑中斑など)の品種がある。
【ヒメユズリハとユズリハの違い】
・ユズリハは枝の出方が大ぶりで、どこか荒っぽい印象を受けるが、ヒメユズリハは葉が小ぶりで、小枝を密生し、樹形も整いやすいため、一般家庭の植え込みには使い勝手が良い。ユズリハに比べるとより寒さに弱いため、暖地や潮風を受ける地域の植栽に向く。
ユズリハに比べて葉が小さいことからヒメユズリハというが、幹はユズリハよりも太くなる。
・ユズリハの葉は垂れ下がるが、ヒメユズリハの葉は垂れ下がらない。

【ユズリハとエゾユズリハの違い】
・ユズリハの仲間にはさらにエゾユズリハというものがある。北海道に多いとして命名されたが、本州の日本海側にも見られる。積雪に対応するため枝は横に広がり、しなやかで折れにくく、葉はユズリハよりもやや小ぶりで薄い。
ユズリハの基本データ
【分類】ユズリハ科 ユズリハ属
常緑広葉 高木
【学名】Daphniphyllum
macropodum
【別名】ユズルハ/本ユズリハ
ショウガツノキ/ツルシバ
オヤコグサ(親木草)
【成長】やや遅い
【移植】やや難しい
【高さ】5m~12m
【用途】シンボルツリー/街路樹
公園/正月飾り
【値段】800円~