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モチノキ(黐の木)
Mochinoki Holly











【モチノキとは】
・本州中部以西から九州沿海の山地に分布する常緑樹。大きな特徴はないが、その地味な安定感からか日本庭園には欠かせない植木であり、モッコク、モクセイとともに「庭木の三大名木」とされる。
・一年を通じて変化が少ないため、庭の背景を作る基本的な樹木として使われることが多いが、幹の太いものは主木としても使われる。
・シラカシやシイなどと同様に高生垣として使われることもある。モチノキは葉が堅いため特に整然とした垣根になる。また、潮風に強いことから海岸沿いの防風林として、葉に水分が多いことから防火樹として使われることもある。大気汚染にも強い。
・樹皮から鳥糯が採れため、「モチノキ」とされるが、本来はヤマグルマの方が良質の鳥糯を作ることができる。モチノキ、ヤマグルマともに「トリモチノキ」という別名がある。現在は法律で禁止されているがかつての子供たちは、棒の先に鳥糯を付け、野鳥を捕まえて飼い慣らしていた。
・雌雄異株で、秋になると雌の木には直径1センチ程度の実ができ、鳥が好んで食べにくる。実の中には種が四つ入っており、繁殖はこの実生によることが多い。
・あまり目立たないが4月~5月にかけて黄緑色の小花が集まって咲く。
・樹皮は画像のような灰褐色で、材は堅く、緻密であり、ソロバンの玉、数珠などに使われる。
【育て方のポイント】
・暖地性の木であり、植栽の適地は東北南部以南となる。場所を選べば東北中部でも育てられるが、冬に葉が黄変して見苦しくなる。
・日照を好む木であるが、半日陰でも育つため家の北側にも使用できる。乾燥した場所よりは湿気のある場所の方が葉色が良くなる。やや粘土質で保水性と養分のある場所が理想的。
・成長が遅く、樹形が乱れにくいことがモチノキの長所だが、枝葉が密生するとカイガラムシが発生し、それに起因するスス病が起こりやすい。 また、ハマキムシ、ツノロウムシ、ルビーロウムシなどの発生も見られる。
・自然樹形はほぼ楕円形だが、庭で使う場合多くは画像のとおり球状に刈り込まれる。刈り込まれた後の復元性は高いが、イヌツゲなどと比べれば葉が大きく、刈り込んだ後は見苦しくなる。
・剪定の適期は6月~7月と11月~12月で、年に二回行えばより良い。ただし、刈り込むのはかなり大きくなった個体に限り、樹齢の低いものは不要な枝を元から切除する程度にとどめる。また、上述の病害虫の被害を防ぐためには時折、枝を透かすような剪定が必要となる。
【園芸品種】
葉が黄色い「オウゴンモチノキ(黄金葉モチノキ)」や葉に模様が入る「白覆輪」、黄色い実がなる「キミノモチノキ」などが知られる。


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【いろいろなモチ】
「〇〇モチ」という名前の樹木が複数あって不慣れな方は混乱しがちですので、簡単にその違いを紹介します。詳細は各ページを参照してください。
まずもっとも混同しやすいのがクロガネモチとモチノキです。クロガネモチは画像のとおり葉の付け根や葉軸が紫がかっています。モチノキは黄緑色です。葉の色はクロガネモチの方が明るめです。
次にカナメモチですが、これは葉の縁にギザギザ(鋸歯)があること、新芽が赤いことで区別できます。
ネズミモチ、トウネズミモチというのもありますが、これらはツバキ並みに葉が艶々し、葉脈が透けて見えるほど薄めです。そして実はネズミの糞に例えられる黒色です。
最後にヒイラギモチですが、これは別名「シナヒイラギ」というもので、モチノキというよりはヒイラギに似た棘のある葉を持っているので、容易に区別できるはずです。
モチノキの基本データ
【分類】モチノキ科/モチノキ属
常緑広葉/小高木
【学名】Ilex integra
【別名】モチ/トリモチノキ/トリモチ
【成長】遅い
【移植】簡単
【高さ】5m~30m
【用途】垣根/シンボルツリー
【値段】500円~