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ナンテン/なんてん/南天
Nandina
【ナンテンとは】
・茨城県以南の暖地に自生するメギ科ナンテン属の常緑低木。ナンテン属の木は他になく、一属一種の木とされる。秋の紅葉や晩秋にできる赤い実を観賞する和風庭園の定番であり、盆栽や正月の床飾りなどに利用される。日本以外では中国やインドにも自生が見られる。
・和風の木であるが、日本は本来の自生地ではなく、中国中南部及びインドの暖地にあったものが薬用として持ち込まれ、その後に野生化したとする説もある。
・ナンテンという名前は、中国名で食堂の灯りを意味する「南天燭(ナンテンチュー)」に由来し、実に野鳥が集まることを意味する。日本では漢字の読みが「難転」に通じるという語呂合わせから縁起の良い木とされ、災いや穢れを断つため、玄関先やトイレ付近、鬼門の方角に植えられる。
・ナンテンの葉は長さ5センチ、幅2センチ前後の小さな菱形の葉が集まって大きな羽根状になる。赤飯や魚料理などに添えられるのは、葉に含まれるナンジニンという成分が熱と水分に触れると、防腐作用のあるチアン水素を僅かに発生するためで、かつてはトイレの手水鉢近くに植えて、ペーパータオル代わりにしていた。また、葉は強壮剤としても利用される。
・初夏(5~6月)になると白と黄色の小さな花が多数集まって清楚な雰囲気になる。白い花の多い時季だが、環境の悪い場所でも開花するため、庭の脇役として重宝する。
・10~11月に熟す果実は直径6~7ミリで、中には種子が二粒入っている。果実にはアルカロイドの一種であるナンテニンが含まれ、乾燥させたものは漢方薬「南天実(なんてんじつ)」として咳止めや喉飴に使われる。
・果実は熟すにつれて赤から黒になるため、岐阜県郡上市八幡町では赤字が黒字に転じるという縁起を担いだ巨大な「南天玉」が作られ、正月飾りに使われる。
・ナンテンは丈夫で育てやすく、放任すれば樹高5mを超えることもある。株立ち状に育つが、枝分かれは少なく、まっすぐに伸びる。ナンテンの材で作った南天箸は不老長寿あるいは中風(身体の麻痺)除けに効果があるとされ、寺院など販売される。箸に実用性はなく、縁起物の装飾品として扱うのが普通(ナンテンではなく、イイギリの材を使うという説もある。)
・幹の直径は通常2~3センチだが、複数の幹が癒合して直径10センチほどになったものは、金閣寺や帝釈天に見られる格調高い床柱になる。材は黄色く、剪定の切断面も黄色になる。
【ナンテンの育て方のポイント】
・乾燥にも強いが、湿気のある半日陰がベスト。日差しの強い場所では葉の色が悪くなる。
・開花期は梅雨時だが、花は雨を嫌い、大量の雨に当たると実のつきが悪くなる。また、できたての実は堅いため、鳥が食べることはないが、季節を経て熟せば柔らかくなり、周辺環境によっては、せっかくの実も、あっという間に食べられる。ナンテンの実を食べるのは主にヒヨドリ。
・剪定は可能だが、基本的には剪定を嫌うため、樹形を整える最低限にとどめなければ、生育が悪くなる。枝葉の途中で剪定すると葉の付け根まで枯れこむため、剪定後の姿はイメージしにくい。
・病害虫に強いが、根が浅く、なおかつ頭でっかちに育つため、風の影響で倒れやすい。
【ナンテンの品種】
・キンシナンテン(錦糸南天)
細い葉が糸状になっている品種で、江戸時代に流行した。
背丈が大きくならず、真夏と真冬以外は葉が赤くなるため、公園、庭園、商業施設などでよく使われる人気のある品種だが、ナンテンのような実はならない。ナンテンに比べて丸みを帯びた葉の様子をオタフクに擬えて命名された。
・シロミ(白実)ナンテン
実がクリーム色の品種。実の色は白とも黄色ともいえず、シロナンテン、キミノナンテンといった呼び名もある。普通の南天と一緒に植えれば紅白の実がなるとして縁起を担ぐ。紅葉しないのが特徴。
・オリヅル(折り鶴)ナンテン
撚れた葉が密生する珍品で、高級品とされる。葉の様子を折り紙の鶴に擬えて命名された。
・ナンテントワイライト
アメリカで生まれた新しい品種。緑の葉に白い模様が入ることに加え、新葉がピンク色になり、三色のハーモニーが美しい。そして背丈もオタフクナンテンと同程度にとどまるため、ナンテンは古臭いという世代にも受け入れられる。
このほかにも薄紫色の実がなるフジナンテンやオレンジ色の実がなるウルミナンテンなどがある。
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ナンテンの基本データ
【分類】メギ科/ナンテン属
常緑広葉/低木
【学名】Nandina domestica
【別名】ナツテン/ナルテン
南天竹
南天燭(ナンテンショク)
【成長】やや遅い
【移植】簡単
【高さ】1m~4m
【用途】和風庭園/公園/生け花
【値段】800円~