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ヤマモモ/やまもも/山桃
Red bayberry
【ヤマモモとは】
・関東地方以西の本州、四国、九州及び沖縄に分布するヤマモモ科の常緑樹。温暖な低地に自生し、西日本の太平洋沿いではごく普通に見られる。葉が密生し丈夫であることから、マテバシイなどとともに街路樹、公園樹、防風林として植栽さることも多い。日本以外では中国本土、台湾、韓国、フィリピンなどに見られ、中国名を楊梅(ヤンメー)という。
・葉は長さ4~10センチ、幅1~3センチほどで、先端は緩やかに尖る。柄はほとんどなく、枝から互い違いに生じるが小枝では枝先に密生する。若い木の葉の縁はギザギザがあるが、成木にはない。革質で厚みがあり、触れるとワックスが効いているような質感がある。
・ヤマモモは雌雄異株で、ほとんど目立たないが3~4月になると葉の脇から円柱状の花穂を出し、小花を密生させる。雄の木に咲く雄花は黄色あるいは赤っぽい褐色の穂状で長さは2~4センチほど。雌の木に咲く雌花は黄緑色で直立し、長さは1センチほどになる。いずれも開花期間は短く、観賞価値も乏しい。高知県では県の花に指定しているが、おそらく果実に重きを置いていると思われる。徳島県では県の木に指定している。
・初夏に熟す直径1~2センチの果実は、表面に小さな多汁質の凹凸があり、6~7月になると暗い紅紫色(白実もある)に熟す。中に入っている一粒の種子が硬くて大きいため、やや邪魔ではあるが、甘味、酸味に加え、松脂のような雑味があり、生で食べることができる。ムクドリ、ヒヨドリ、キジバト、スズメなどの鳥はこれを採食する。
・ヤマモモという名前は、山に生えてモモのような実がなることに由来するというが、その質感はモモの果実と程遠い。果実ではなく葉がモモに似るという説もあり、筆者はそちらを採用したい。当初は本種をモモと呼んでいたが、中国から入ったモモに押されて本種はヤマモモなったという。
・四国や九州ではヤマモモの果実が店頭販売されるが、朝に摘んだものが昼にはダメになるといわれるほど日持ちしないため、ジャムや果実酒、塩漬けに使われることが多い。果樹として品種改良が進んでおり、収穫メインの場合は実の直径がより大きい「瑞光」「森口」「亀蔵」といった品種が好まれる。
・幹は直立し、その径は最大で1mほど。灰白色~赤褐色の樹皮は薬用、染料用になる。染料としては媒染剤によって黄色または茶色になり、潮水に強いため主に漁網を染めるのに使われた。
【ヤマモモの育て方のポイント】
・根に根粒菌を共生させており、収穫量を気にしなければ、日陰や痩せ地でも育てられる。粘土質の土壌を好むが、土質はあまり問わずに育つ。挿し木や接ぎ木は難しく、繁殖は実生による。
・潮風、強風、乾燥に強く、葉が密生するため、完全な目隠しを作りやすい。ただし株下は暗くなるため、花を植えるような楽しみ方はしにくい。また、大量の実が落下して地面を汚すため、街路樹としては雄の木を使うことが増えている。寒さには弱く、植栽の適地は関東以西となる。
・収穫については豊作と凶作(裏作)を隔年で繰り返すことが多い。実がならない年は一粒もできないこともある。また、苗木を植えた場合、収穫できるようになるまで10年ほどかかる。
・収穫のためには、雌雄両方の木が必要というが、風媒花であり半径1.5キロ程度以内にオスの木があれば足りる。(実際、管理人は雌の木しか植えていないが収穫できる。)
・コブ病やハマキムシ(写真参照)の被害が多い。また、熟した実にはカナブンが寄ってきて食害することがある。
【ヤマモモの品種】
・シロモモ
果実が白い品種
・ヒメヤマモモ
背丈が30センチほどにしかならない品種で、葉も小さい。
【ヤマモモに似ている木】
遠目にはヤマモモによく似るが、葉の縁がややギザギザしていることや葉の裏側の模様が異なる。
・モモ
一般によく知られるモモはバラ科サクラ属で、ヤマモモとはまったくの別種。ヤマモモは山に自生する桃に似た実という意味合いで名付けられたが、モモの味はしない。
・ヤチヤナギ(エゾヤマモモ)
北海道、東海地方以北の本州に分布するヤマモモ科の落葉小低木。尾瀬などの湿原に自生し、ヤマモモとよく似た葉を持つが、落葉性の低木であり、ヤチヤナギ属に分類される。
ヤマモモの基本データ
【分類】ヤマモモ科/ヤマモモ属
常緑広葉/高木
【漢字】山桃(やまもも)
【別名】ヤマモ/ヤモモ
ヤマウメ/モモ
ヨウバイ(楊梅)
シブキ/ももかは
【学名】Morella rubra
【英名】Red bayberry
【成長】やや早い
【移植】簡単
【高さ】5~20m
【用途】シンボルツリー/果樹
街路樹/公園/防風
【値段】800円~