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カラマツ/からまつ/唐松
Japanese larch
【カラマツとは】
・蔵王山以南の本州中部に分布するマツ科の落葉高木。庭木として一般的に使われるクロマツやアカマツとは異なり、成長がきわめて早いためもっぱら造林用として植栽されるが、新緑、黄葉あるいは落葉した樹姿が美しく、自生地付近では観賞用とすることもある。日本特産のマツとしては唯一の落葉性。
・名前の由来は落葉して葉がカラになることにちなむとする説と、カラマツ林の様子が、唐時代の中国で描かれた絵画に登場するマツに似ているためとする説がある。
・カラマツの葉は線形で長さ2~3センチ、幅1~1.5センチほど。ヒマラヤスギに似た明るい緑色だが、葉先は尖っておらず、質感も柔らかいため、手で触れてもチクチクしない。長い小枝と短い小枝では葉の付き方が異なり、長い枝では螺旋状に生じ、短い枝には20~30本の葉が束状に生じる特徴を持つ。秋になると画像のように黄葉し、幻想的な風景を作る。
・天然年の分布は長野県を中心とした中央日本で、富士山麓(特に山中湖)にも多くのカラマツ林が見られる。北海道などその他の地域で見られるカラマツの多くはいわゆる自生ではなく、1950年代に足場用の丸太を確保するため人工的に植林されたもの。黄葉の絶景で知られる浅間山麓のカラマツ林も江戸末期以降に植栽されたものである。
・カラマツの仲間は火災跡地や崩落地など、他の樹木が突然消えた間隙をついて真っ先に生じる木の一つ。火山地方に多いのはこの性質のためでもある。
・雌雄異株で、5月ころになると雄の木には雄花が、雌の木には雌花が咲く。雄花は黄色い卵形で下向きに、雌花は薄いピンク色で直立する。
・球果(マツボックリ)は初夏にでき始め、秋に黄褐色に熟す。直径は3センチ弱。翌春までの長い間、枝に残るが、強風によって落とされ、他の樹木に引っ掛かっている様もよく観察される。
・幹の直径は最大で1mほどになり、樹皮は時にアカマツのような赤褐色になり、裂け目を生じ、長めの鱗片になって剥離する。材は節やヤニが多い上に狂いやすいため、質が優れているとはいえないものの、太くて真っすぐなわりに廉価であるためパルプ(集成材)、ガーデニング用の枕木、合板、壁板、フローリング、包装などに広く用いられる。人工的に植えられたカラマツよりも天然のカラマツの方が木目は細かい。
【育て方のポイント】
・大木であり一般家庭の庭植えは珍しい。落ち葉掃除も大変そうであり、管理人は個人の庭園に植栽された例を見たことはない。
・他のマツ類同様あるいはそれ以上に日向を好む陽樹であり、日陰では育ちが悪い。
・火山性土壌を好むが適応力があり、土質を選ばずに育つ。痩せ地や乾燥地にも耐える。
・寒さに強く、北海道でも植栽できるが、暑さには弱く、暖地では葉の観賞価値が下がる。
・雄大な自然の樹形を観賞するのが望ましいが、萌芽力はあり、剪定に耐える。
・常緑性のマツに比べると寿命は短く、30年程度とされる。
【カラマツの種類】
・ヨーロッパカラマツ
葉がより短く、松ぼっくりはより大きい。名前のとおり欧州に分布する。
・シコタンマツ(グイマツ)
千島列島、樺太に生息する。カラマツとの区別は難しい。カラフトカラマツ、チシマカラマツとも呼ばれる。
以上のほかに、シベリア極東北部に見られるダフリアカラマツ(シベリアカラマツ)、マンシュウカラマツ、、チョウセンカラマツ、ホクシカラマツ、ウンナンカラマツ、アメリカカラマツ、アラスカカラマツがある。
【カラマツに似ている木】
同じマツの仲間であり葉の形状が似るため、しばしば混同される。ヒマラヤスギは常緑性であり、葉に触れるとチクチクする。
・イヌカラマツ
中国東部及び南部を原産地とするイヌカラマツ属の落葉針葉樹で、中国では寺院を中心に庭木として使われる。カラマツよりも葉が大きいこと、球果(マツボックリ)が枝の上でバラバラになって種子を散布することなどが異なる。
スギ科ヌマスギ属の落葉針葉樹。分類や性質は異なるが、同じように冬季に葉を落とす大木であること、カラマツの別名がラクヨウショウ(落葉松)であることから紛らわしい関係にある。
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紅葉して落葉するおもしろい松カラマツ 落葉する松の盆栽 |
カラマツの基本データ
【分類】マツ科 カラマツ属
落葉針葉 高木
【学名】Larix kaempferi
【別名】落葉松(ラクヨウショウ)
富士松(フジマツ)/日光松(ニッコウマツ)
【成長】早い
【移植】難しい
【高さ】15~30m(稀に50m)
【用途】公園/盆栽
【値段】2000円~